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〈朝・日国交正常化作業部会〉 拉致問題 立場の隔たり明らかに

日本 強硬姿勢より「協議継続」

 【ウランバートル発=金志永記者】朝・日国交正常化作業部会2日目では、拉致問題が取り扱われた。この日の会議で日本は、朝鮮側に拉致問題と関連した国内世論と自国政府の立場を伝えた。予想されたことではあるが、朝・日双方の立場の違いが大きかった。

ハノイとの違い

 3月にハノイで行われた朝・日作業部会と比べると会議の様相は異なっていた。ハノイでは、拉致問題が朝・日関係正常化の核心問題の討議を封印するために利用された。

 当時日本は、「拉致被害者は全員生きている。したがって彼らが日本へ帰ってきてこそ問題が解決される」という論理を全面に押し出した。

 日本側は、朝鮮側の調査発表を全面否定することに終始した。この間、問題解決のために尽力した朝鮮側の反発は当然予想された。会議の成果に関係なく、朝鮮に対する対決姿勢を示すことだけを念頭に置いた強硬策だった。

 今回、日本側代表団団長を務めた美根慶樹・日朝国交正常化交渉担当大使は会議に先立ち、「拉致問題の解決なくして国交正常化はありえない」という従来の立場を繰り返した。

 しかし、拉致問題と関連した日本側の主張に接しても感情が大きく揺らいだ様子のなかった朝鮮代表団の表情から推し量ると、日本側はハノイ会議の轍を踏まなかったと思われる。

 6者会談「2.13合意」が本格的な履行段階に入り、朝米関係の進展が可視化する中、日本が朝鮮との対話の枠組みを維持することに重点を置き、交渉戦術を再び策定したことは現実的な対応だと言える。

 拉致問題を朝・日関係の進展にブレーキをかけるための方便に利用しても、日本に有益なことは何もない。

「取引ではない」

 この間、拉致問題と関連して日本側は憶測と独断に満ちた世論操作を繰り返してきた。それにより本質を見分けられない混乱が作り出された。拉致問題と関連した世論ミスリードの代表的な例は、日本が過去清算問題と拉致問題を対峙させていることだ。

 たとえば2日間の日程で行われたウランバートル会議で、初日に過去清算問題が討議され、その翌日には拉致問題が議題として上程された。

 この事実を根拠に、朝・日双方がそれぞれの問題の解決において「誠意」を見せることにしたという見方も可能だろう。

 ところが2つの問題を商取引のような観点から論じるようになれば、日本国内で無駄な論争だけを触発させ、むしろ問題をこじれさせることになる。

 今日のように朝・日関係が悪化するようになった根本原因は、日本の過去清算が成されなかったところにある。過去清算は朝・日関係において最も核心的な問題だ。

 拉致問題は、両国の非正常な関係が長期化される中で発生した。

 もともと、過去清算問題と拉致問題は対峙させられない問題だ。実際、「拉致問題の解決を最優先する」という日本側の論理は、過去にあった朝鮮側との対話で何の結実も結ばなかった。

 日本の過去清算は一時的に起きたある事件や、一般的な義務に関する問題ではない。日本が歴史的、道徳的に必ず解決せねばならない問題であり、まさにこれが朝鮮側の立場だ。

核心は過去清算

 今会議に参加した朝鮮代表団関係者も「朝・日関係においては、総体的な構図の中で個別の懸案を扱い解決すべきだ」と話した。両国の交渉では、関係改善の核心問題である日本の過去清算を抜きには語れないとの指摘である。朝鮮代表団関係者は、「過去清算問題は日本国家の価値観、道徳観に関する問題でもある」と説明した。

 総体的な構図の中で懸案問題を解決する方法は、朝・日平壌宣言、そして6者会談で採択された一連の合意文書にも明示されている。日本がそれを行動で実践して行かねばならない国際環境が醸成されつつあるのだけは確かだ。

 拉致問題と関連した論議は平行線をたどったが、対決の局面に置かれている朝・日関係を考慮したとき、今回拉致問題を論議したということによって、日本がこれまで陥ってきた「ギブアンドテイク式思考の罠」からようやく逃れられる契機になるかもしれない。

[朝鮮新報 2007.9.12]