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そこが知りたいQ&A−朝・日作業部会、何が話し合われたの?

「早期国交樹立」に向け努力、協議の枠組維持 「可能なかぎり頻繁に開催」

 モンゴルのウランバートルで行われた朝・日関係正常化作業部会(5〜6日)で双方は6者会談合意に対する公約を確認し、朝・日平壌宣言に基づく早期国交正常化に向けて努力することで一致した。6者会談プロセスが進展する中、唯一対立が続いてきた朝・日関係にも変化の兆しが見え始めた。協議の内容、今後の展望などについてQ&Aで見た。

 Q 「具体的な成果がない」との指摘もある。今回の作業部会の結果をどう評価できるか。

 A 作業部会終了後、双方は「早期国交正常化のための努力」などで見解が一致したと発表した。朝鮮代表団と日本代表団は別々に会見を行ったが、見解一致に関する発表の文面はまったく同じものであった。双方が綿密に打ち合わせた様子がうかがえる。

協議を行う朝鮮側(右)と日本側代表団(5日、ウランバートルのモンゴル政府迎賓館)

 朝・日の作業部会が開かれるのは、3月のベトナム・ハノイでの協議以来6カ月ぶり。前回は日本側が拉致問題で強硬姿勢を示し、関係正常化に関する論議を行えないまま終了した。

 今回の作業部会の意義を一言で表すとすれば、「リセット(再設定)」だ。日本側が朝鮮との対決路線に固執したために両国の関係は悪化し、まるでコンピュータが「フリーズ」したように動かなくなってしまった。関係改善のプロセスを進めるためにも、「再起動」の手順を踏む必要があったといえる。

 Q 日本は従来の政策を変更したのか。

 A 「軌道修正」したといえる。しかし政策そのものが変更されたかどうかは、今後の行動を見極めなければならないだろう。

 日本としては今回の協議を前向きに評価しつつも、同時に従来の姿勢は変えていないとのメッセージを送り続けるかもしれない。「拉致問題解決を重視する」との発言も繰り返される可能性がある。

 Q 会議では何が論議されたのか。

 A 朝・日作業部会は6者会談の合意に基づき、その枠組みの中で行われる協議だ。そして6者会談合意を誠実に履行するというのが朝鮮の立場だ。

 今回、朝鮮が日本側と「早期国交正常化のための努力」で一致したということは、協議の中でそれ相応の議論があったからだと推測される。

 協議関係者によると、関係正常化の基本問題である日本の過去清算について朝鮮側は、▼日本が植民地時代に朝鮮人民に与えた人的、物的、精神的被害に対する補償問題▼在日朝鮮人の地位問題▼文化財返還問題を提起した。

 日本側は、朝鮮側の要求と主張に対して「誠実に応じる」との姿勢を示した。

 とくに補償問題では、平壌宣言にある「財産及び請求権の相互放棄」を根拠にODA(政府開発援助)方式による経済協力だけを主張してきた対応に変化があったという。

 過去に受けた人的、物的、精神的被害というとき、朝鮮側は強制連行や「従軍慰安婦」問題などに対する日本側の責任を追及してきた。今回の協議で日本側が単にODAという形式の議論に止まらず、補償に関する問題に包括的に取り組んでいく姿勢を示したことは注目に値する変化だ。

 また朝鮮側は、総連弾圧問題も重点的に取り上げた。総連中央会館の強制競売問題について、「総連側が当初から誠意を持って提示してきた合理的で妥当な解決策を、安倍政権が政治問題化したことによって発生したもの」だと指摘した。競売が強行された場合、6者会談合意の履行を一時中断に追い込んだBDA(バンコ・デルタ・アジア)問題よりも深刻な事態を招くだろうとも警告したという。

 Q 「拉致問題」はどのように扱われたのか。

 A 協議関係者によると日本側のスタンスは、「拉致問題」について疑問点がまだ残っているので、朝鮮側が対応してくれることを望むというものだった。朝鮮側は従来の姿勢で協議に臨んだ。

 Q 今後の協議の展望は。

 A 朝・日双方は今後も、早期国交正常化のための具体的行動を協議することで一致した。会議後の会見では、「可能な限り作業部会をひんぱんに開催していく」と発表した。

 数日後、日本国内では「拉致問題で進展がなかった」ことを受けて対朝鮮経済制裁を半年間延長するという「政府方針」が報道されたが、一部新聞が伝えただけで、他のメディアによる続報はない。日本が制裁を延長した場合、朝鮮側は作業部会の再開に応じない可能性が高い。「制裁延長はウランバートル合意を反故にするもの」(9日、宋日昊大使)だからだ。

 安倍首相の辞任によって、日本国内の政局は流動化の様相を呈している。朝・日関係にも影響を与えるかもしれない。ウランバートル合意に関する日本の真意は、次回の6者会談後、日本側による作業部会開催に向けた環境整備の過程を見ていけば明らかになるだろう。(金志永記者)

[朝鮮新報 2007.9.15]