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〈今年の金正日総書記−2007年−〉 経済の復興に重点、情勢の進展背景に本格化

 新年3紙共同社説が「先軍朝鮮の新たな繁栄の年代が開かれる偉大な変革の年」と位置づけた今年、朝鮮の国内外では今後の動きを展望するうえで重要な出来事が相次いだ。金正日総書記は昨年に引き続き政治、経済、軍事などさまざまな分野で精力的な活動を行った。総書記の今年の活動を分野別に振り返った。

経済、軍事

表1 総書記の今年の活動(朝鮮中央通信の報道回数)

軍事 経済 外交 文芸
33 18 22
教育 北南 その他  
29

表2 視察した経済関連施設

分野別 地域別
電力 慈江道 11
軽工業 咸鏡北道
機械 咸鏡南道
石炭・金属 平安北道
農業・畜産 江原道
化学・肥料  
その他

 12月11日現在、朝鮮中央通信が報じた金正日総書記の公式活動は113回。内訳は、軍事部門33回、経済18回、対外関係22回など(表1参照)。

 国内の活動で最も注目されるのは、やはり経済だろう。新年3紙共同社説は今年の第1の目標として「社会主義経済強国の建設」を掲げた。経済の最優先課題については、「人民生活の向上」であると指摘した。4月に開かれた最高人民会議も軽工業部門の強化と、4大先行部門である電力、石炭、金属、鉄道運輸部門に国家的な力を注ぐ政策を打ち出した。

 総書記の経済分野への現地指導は18回だったが、視察した対象は30カ所にのぼる。軍事関連の活動33回のうち、軍部隊の視察は20回だ。昨年の同じ時期と比べて、軍部隊視察の回数は約3分の1に減った。一方、経済分野での活動を見ると、視察で訪れた対象が昨年より9カ所増えていることが注目される。国防力の強化を引き続き重視しながらも、経済強国の建設を主目標として提示した今年の政策の方向性が表れている。

 分野別に見ると、軽工業と電力、機械工業部門が各6回と最多だった(表2参照)。

 石炭、金属部門に対する指導も注目される。同部門と関連して総書記が視察した対象は、機械工業部門の対象も含めると9カ所になる。新年3紙共同社説が「経済発展の未来を見通し、地質探査事業を先行させながらエネルギーおよび資源開発を展望性を持って進めていく」と指摘していることを考えると興味深い。

 地域別に見ると、慈江道、平安北道、咸鏡南北道に集中している。

 月別では8月が最も多い。国内では、8月に連日報じられた咸鏡南北道に対する現地指導を「三伏(極暑)季強行軍」と呼んでいる。労働新聞8月31日付に掲載された政論は、「富強祖国建設の新たな局面を開くうえで深遠な意義を持つもの」と、その重要性を強調した。

 咸鏡南道は経済の重要部門の対象が集中しているため、国の経済発展を推し進めるうえでカギとなる地域と言われている。その咸鏡南道を総書記が精力的に指導し、同地域の経済建設を評価した意味は大きい。

 また、今年を表すキーワードとして、「泰川の気概」を挙げることができる。1月、平安北道の泰川4号青年発電所を現地で指導した総書記は、厳しい環境の中でも発電所の建設をやりとげた人びとの精神を「泰川の気概」と呼び、高く評価した。その後、「泰川の気概」を全国に広め、経済建設を推し進めていこうというキャンペーンが繰り広げられた。

外交

訪朝中の中国共産党の劉雲山書記と会談する金正日総書記 [朝鮮中央通信=朝鮮通信]

 外交面では、3回にわたって外国の首脳や高官を接見した。そのうち2回は中国の高官だ。7月に楊潔箎外相が、10月に劉雲山書記がそれぞれ訪朝した(写真)。また3月4日、劉暁明・駐朝中国大使の招請で中国大使館を訪問した。

 楊外相の訪朝は、6者会談合意の履行プロセスが再始動するなど朝鮮半島情勢が急進展を迎える中で実現した。一方、劉書記は中国共産党第17回大会の閉幕直後に訪朝した。両者とも金正日総書記に胡錦濤総書記からの口頭親書を伝えている。

 近年、朝中関係は政治、経済、文化、スポーツなど各分野で相互往来や接触、交流が盛んに行われるなど、良好に発展している。朝中が双方にとって重要な情勢の局面において、高位級の往来を通じ懸案事項を緊密に協議したことは、親善協力関係の発展に対する双方の確固たる意志を示すものだ。

 一方、総書記は、ベトナム共産党のノン・ドク・マイン書記長が訪朝(10月16〜18日)した際、一行を空港で出迎えた。翌日には書記長の宿泊先を訪問し、単独会談を行った。一行の帰国の際も空港で見送るなど、異例の対応だった。ベトナム最高指導者の訪朝は1957年以来50年ぶりのことだったが、両国間の首脳外交は朝鮮とベトナムとの関係を新たな時代に合わせて強化、発展させるうえで重要な出来事となった。

北南

 7年ぶりに実現した北南首脳対面(10月2〜4日)は、総書記の今年の活動におけるハイライトと言えるだろう。総書記は盧武鉉大統領を4.25文化会館前広場で出迎え、二度にわたって大統領と会談した。4日には、両首脳が署名した「北南関係の発展と平和・繁栄のための宣言」が発表された。

 その後、堰を切ったように当局、民間レベルで対話と協力、交流が活性化していることは周知の通りだ。

 今年6月以降、当局間の対話が中断し、明るい展望が見えなかっただけに、8月8日の首脳対面合意のニュースは電撃的だった。

 また11月2日には、平壌を訪問した南朝鮮・現代グループの玄貞恩会長、現代峨山の尹万俊社長一行と会見した。

 朝鮮は今年、金日成主席生誕95周年と朝鮮人民軍創建75周年という節目を迎えた。

 祝賀行事は例年になく盛大に行われた。建軍節には錦繍山記念宮殿訪問、人民軍創建75周年記念閲兵式参加、人民軍功勲合唱団の公演観覧など、総書記の活動が相次いで報じられた。

 6者会談の進展、北南首脳対面の実現に代表される今年の朝鮮半島情勢の動きや国内での経済強国建設の本格化などを考えるとき、年頭の共同社説で示された「変革の年」という表現が特別な意味を帯びていることは明らかだろう。

 朝鮮は5年後の2012年を見据えている。11月30日、12月1日の両日、平壌で開かれた全国知識人大会あてに送られた朝鮮労働党中央委員会の祝賀文は、「金日成主席生誕100周年を機に強盛大国の扉を開くという党の雄大な構想」について言及し、当面の目標として来年の建国60周年(9月9日)を「勝利者の大祝典として輝かせよう」と訴えた。(李相英記者)

[朝鮮新報 2007.12.12]