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朝鮮の論調 3月

 2月8〜13日にかけて北京で行われた第5回6者会談第3ラウンドの合意にそって、各作業部会の開催からスタートした3月。建設的な雰囲気が伝えられた朝米の一方で、朝・日は拉致問題をめぐって紛糾、頓挫した。19〜22日にかけて行われた第6回6者会談は、BDA問題をめぐる米国の不誠実な対応が明るみに出て休会。再開日程は決まっていない。一方、朝鮮国内では、金正日総書記が旧正月の望月(小正月)に駐朝中国大使館を訪問するなどの動きが見られた。

−対米 合同軍事演習の糾弾に重点

 3月初旬は、ニューヨークで行われた朝米作業部会の進行具合を見守るかのように、3月12日までまったく配信されなかった。

 3月最初の対米論調は、12日に配信された「熱気を帯びて強化される軍備増強の動き」(労働新聞)だった。

 この種の論調はこれまでも幾度となく配信されてきたが、3月になって少し変化が見られた。

 米国や日本に限定して軍事動向を警戒する内容を配信した従来に対して、今回はロシアと中国の動きにも初めて言及。「ロシアは2015年まで1890億ドルを投資し、戦略的武器を完全に再装備し、陸軍と海軍の装備を更新することを計画している」「中国は昨年末に発表した国防白書で、初めて自国の核戦略を公開し、2020年まで核反打撃、遠距離海上作戦能力を高めることについて強調した」などと論じている。

 続く3月28日にも「軍事力強化は誰の独占物でもない」という内容が配信された。そこでも「米国を中心とする欧米列強」を名指しで列記し、軍備拡張が国際的な傾向であることを指摘。地球上に存在するすべての国は自国を守るための当然の権利を有する、と主張した。

 そして最後は、「…東北アジア地域に戦争の危険性が存在するかぎり、われわれは自衛的権利を堂々と行使していくだろう」という一文で結ばれている。

 12日以降は連日のように合同軍事演習準備を非難する論調が配信され、6者会談開催期間は一時中断。終了日の22日に、「2.13合意履行に影、合同軍事演習糾弾」と題する外務省代弁人の発言を、通信社記者の質問に答えるという形で発表した。

 23日以降も継続して合同軍事演習を非難する論調を配信。演習実施(25日)以降も、「演習は反朝鮮敵視政策の発露」「対話と戦争演習は両立しない」と厳しく糾弾している。

 また、14日には合同軍事演習を糾弾する北、南、海外団体の共同声明が発表された。声明には北側11、南側21、海外32の合計64団体が名を連ねた。

 ほかには、「UN開発計画中断責任は米日」(13日、外務省代弁人)、「釜山『米国文化院』放火闘争25年で談話」(18日、祖国戦線代弁人)などが配信された。

−対日 「慰安婦」妄言批判に集中

 安倍首相の「慰安婦」発言に代表される、過去清算問題に真摯でない現政権への批判内容に論調が集中した。

 「慰安婦」問題で「墓穴を掘った」日本政府に対して、世界中の世論を喚起するような形で連日のように取り上げていた。

 7日には、労働新聞、被害者補償対策委代弁人、祖国戦線代弁人が相次いで安倍首相の「慰安婦」問題発言を非難する内容を発表。合わせて朝鮮外務省代弁人も「安倍妄言、『慰安婦』犯罪庇護は軍国主義復活の追求」と題する談話を発表した。国内メディアを総動員しての配信といえる。

 この時期はちょうど、朝・日の作業部会が拉致問題を巡って頓挫した時期。以降、世界各国のメディアは「自分たちが犯した過去犯罪には目をつぶる日本」という論調に傾いていった。その流れは現在も継続している。

 6者会談と関連しては、会談開催中の20日に「6者会談合意事項履行を破綻させる不純な策動」と題する論評を配信した。また、休会直後の26日にも「日本は6者会談に参与する資格がない」との論評を発表。今後、6者会談をめぐって朝・日間がどのように推移するのか、各国は日本にどう対応するのか注目される。

 ほかには、「危険な軍事大国化策動―偵察衛星発射」(5日、労働新聞)、総連弾圧は自滅の落とし穴を掘る行為」(5日、労働新聞)、「民族排外主義固執が『美しい国』建設なのか」(12日、論評)、「過去清算のない常任理事国進出」(19日、労働新聞)などが配信された。

−対南 ハンナラ党を叩く語調激化

 ハンナラ党を非難する内容が依然、多数を占める。変化としては、表現の激化が挙げられる。

 たとえば、「売国奴逆賊(ハンナラ党)の群れを埋蔵しなければならない」(3日、労働新聞)、「ハンナラ党を審判台へ」(3日、祖平統代弁人)、「ハンナラ党が執権すれば戦争が起きる」(22日、民主朝鮮)など。

 また、24日には民和協がハンナラ党の世論欺瞞を糾弾する公開質問状を発表。ハンナラ党が23日に「対北政策転換」を検討していると発表したことに対して、「危機と孤立から逃れるための欺瞞術」だと一蹴した。

 また、国際高麗人統一連合会と反帝民族民主戦線も相次いで反ハンナラ党闘争を呼びかけた。

 2日には、第20回北南閣僚級会談について配信。会談の内容や合意事項が具体的に発表されていた。つづく14日には、「北南関係発展は互いの意志と努力にかかっている」(労働新聞)と題する論調が配信された。

 ほかには、「米国上層部を相次いで訪ねる『大統領候補』たち」(3日、労働新聞)、「極右保守言論は北南協力事業に冷水」(18日、朝鮮記者同盟代弁人)などが配信された。

 対米論調の7割は軍関連であった。合同軍事演習を非難する内容が中心で、外務省代弁人名義の内容も発表された。にもかかわらず、米、南は25日に合同演習を強行。6者会談の開催と並行しての動きだった。米国の本質が窺える。

 対日論調は、圧倒的に「慰安婦」問題に関する「安倍発言」に論調が集中していた。また、6者会談における日本の言動を牽制する向きもみられた。「倭国」表記は継続中である。

 対南論調では、「ハンナラ叩き」が続いている。執拗、という向きがないでもない。何かを意図したものであろうか。合同軍事演習を非難する論調も多数みられた。

 第6回6者会談および作業部会に関する論調は、米、日、南ともに皆無であった。

 4月、朝鮮国内では二つの大きな名節を迎える。金日成主席生誕95周年(15日)と朝鮮人民軍創建75周年(25日)だ。これに合わせてどんな動きがあるのか。また、今月末には安倍首相の「米国初詣」が予定されているという。6者会談の行方も気になるところ。配信される論調を注視したい。(まとめ=韓昌健記者)

[朝鮮新報 2007.4.6]