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朝鮮の論調 5月

 6者会談をはじめ朝鮮半島を取り巻く国際情勢に目立った動きのなかった5月。米国のもたつきぶりがちらほら伝えられる程度だった。日本では、参院選を前にして「強気の安倍カラー」が伝えられる中、松岡前農水相の自殺と年金記録問題を巡って世論が紛糾。内閣支持率が急落した。北南関係では、将官級軍事会談(8日)を経て17日に列車の北南縦断試験運行が東西海線で行われ、30日には第21回北南閣僚級会談が開催された。

−対米 「行動対行動」を一貫して主張

 最初の配信は、「強権で世界を支配しようとするのは時代錯誤的な妄想」(3日、労働新聞)だった。

 続いて「太平洋地域米総司令官の発言非難」(4日、労働新聞)、「米軍維持費分担金関連―脅迫言動を糾弾」(4日、祖平統書記局報道)が配信された。

 その後、しばらく配信は10日間ほど小休止する。次に行われた配信は15日で、内容は「凍結されている資金送金問題について言及」(外務省代弁人)だった。

 その中で「凍結資金の送金が実現すれば、われわれは2.13合意事項に沿って核施設稼働中止措置を講じる用意がある」との立場を一貫して主張した。

 さらに、「2.13合意がいったん履行に入れば、それに対するわれわれの意志は行動を通じて明白に示されるだろう」と、合意履行に対する強い意志を強調した。

 5月11日付のワシントン・タイムズに、米国内大手銀行に送金仲介を依頼するライス国務長官の動きが報道されているのを見ると、あの10日間に何らかの動きが朝米間であったのかもしれない。

 しかしその後は一転、「核戦争をもたらす主犯」(16日、労働新聞)、「5.18光州人民蜂起27周年談話、反米自主化闘争呼びかけ」(19日、反帝民戦代弁人)、「帝国主義の世界支配野望は実現されない」(20日、労働新聞)、「朝鮮半島情勢を激化させる張本人」(22日、民主朝鮮)、「米軍、空中北侵戦争演習に狂奔」(26日、朝鮮中央通信)−と、あいかわらずの軍事関連非難報道。この種の配信は30日まで続いた。

 凍結資金の解除問題をめぐってなかなか腹をくくれないブッシュ政権に業を煮やしたのだろうか。

 15日以降は、対話の裏で行う米側の行為を非難する内容が連日のように配信された。

−対日 軍国主義化を多角的に検証

 安倍首相の「米国初詣」と中東行脚からの帰国に合わせた報道が月初めから氾濫するかと思いきや、意外にも5月第一週の対日論調は一つも配信されなかった。

 最初の配信は「なぜ急ぐのか−日本のミサイル防衛体系樹立動向」(8日、民主朝鮮)。続いて10日に「日本の醜悪な歴史わい曲策動を断罪する」という長文の朝鮮中央通信社備忘録を配信した。

 今月は多角的な視点からの配信が目立った。

 14日 協調外交に映された黒い下心−安倍の中東行脚(労働新聞)

 15日 軍国主義狂信者らの危険な企図−安倍の憲法改定策動

 19日 何を狙った「協力」なのか−日本官吏どもの米国行脚(民主朝鮮)

 25日 憲法改定のための「国民投票法」を評する(論評)

 26日 露骨な軍国主義的再侵煽動−国会議員39人「靖国」参拝(労働新聞)

 27日 安倍内閣の本心を現した「武器輸出三原則」再検討主張(労働新聞)

 28日 性奴隷犯罪の強制性を否定する黒い本音(労働新聞)

 30日 防衛ではなく攻撃のためだ−自衛隊が攻撃型変身(民主朝鮮)

 31日 「集団的自衛権」を行使しようとする無謀な企図(労働新聞)

 いま日本で論議されている問題にまんべんなく言及している。このような論調はこれからも引き続き配信されるものと思われる。

−対南 列車試験運行成功も冷静な反応

 先月、ハンナラ党関連の配信は目に見えて激減した。5月はどうかと統計をとってみると、はやり低調傾向。

 今月のハンナラ党関連の配信は5回。うち、初めて個人名を名指しで批判した。「李明博の同族対決妄言」(26日、労働新聞)、「恩を仇で返す政治−李明博妄言」(29日、民主朝鮮)―がそれだ。

 李明博前ソウル市長が正式に立候補を表明したのは10日のこと。李氏以外にもこれから続々と候補者が名乗り出る。それに合わせて逐一、名指しの論調を配信するのだろうか。

 さて、耳目の集まることが予想された列車試験運行関連の報道は、どうだったろう。

 「統一の象徴」といわんばかりの歴史的慶事として大々的に報じた南側に比して、北側の反応はきわめて冷静だった。

 論調も、17日に「北南鉄道連結区間−列車試験運行が行われた」という内容を配信した一回のみ。事実関係だけを簡略に報じている。

 少し拍子抜けの感も漂うが、北側にしてみれば、「あくまで大事の前の小事」ということか。

◇    ◇

 5月、ライス国務長官は多忙なようだった。朝鮮を除く5カ国外相会談を呼びかけたり、国内の大手銀行にBDA凍結資金の送金仲介を打診してみたり。

 しかし、外相会談の方は中ロの反対にあって失敗。送金仲介依頼も、財務省が科しているBDAとの取引禁止制裁をめぐって結論は出ていない。

 米国がもたついている間も、朝鮮はいたって静観の構え。一貫して「送金が確認されれば2.13合意に沿って行動する」と主張している。

 日本国内では、復調傾向にあった安倍内閣の支持率がここにきて急落。国内に動揺が走った。

 内閣支持率が低下した時は要注意だ。数字回復のために「錦の御旗」を振るという、例の「ワンパターン」にすがりかねない。公安当局も「あら探し」に狂奔している頃だろう。今度はどんな「拉致疑惑」が飛び出すことやら。

 南朝鮮では、そろそろ大統領選に向けて国内がヒートアップし始める頃。ハンナラ党内では、李明博前ソウル市長と朴槿恵元同党代表がそろって正式に立候補を届け出た。

 とはいえ、これまでと比べて全体的に「凪」状態の続いた5月。各国首脳陣がG8サミットのことで頭がいっぱいだったとも考えられるが、使い古された言い回しに、「嵐の前の静けさ」というのがある。

 「表立って動きがみられなかった」ということは、つまりは「水面下で動いていた」ということになるのかどうか。(まとめ=韓昌健記者)

[朝鮮新報 2007.6.15]