朝鮮の論調 9月 |
朝米国交正常化作業部会(1〜2日、ジュネーブ)からスタートした9月。テロ支援国家指定削除など諸懸案に関して具体的な議論が行われたという。また、朝・日国交正常化作業部会(5〜6日、ウランバートル)も行われ、日本側の態度変化に対して朝鮮側が一定の評価をしたと報じられた。一方、日本では安倍首相がAPECからの帰国後、12日に突然辞意を表明。その後、福田新政権が誕生した。27〜30日にかけては第6回6者会談第2ラウンドが北京で行われ、10月3日に合意文書が発表された。 −対米 作業部会の成果強調 朝米国交正常化作業部会を受けて3日、朝鮮外務省代弁人は朝鮮中央通信社記者との会見で、「『9.19共同声明』履行に向けた次の段階の目標が討議され、一連の合意に至った」と回答した。 そして、「朝米双方は、年内に(朝鮮側の)現存核施設を無力化するための実務的対策を討議し、合意した」とし、続けて「米国は、テロ支援国リストから朝鮮を削除し、敵性国貿易法による制裁を全面解除するといった政治的・経済的補償措置をとることにした」と発表した。 そして「その結果、今後開かれる6者会談全体会議での進展の基礎が築かれた」と結んだ。 「朝米2国間の協議・合意」=「6者会談の進展基礎構築」としていることに注目したい。6者会談を指して、事実上の「朝米会談宣言」を行ったに等しい。 実際、第6回6者会談第2ラウンドで採択された合意文書の朝米関係正常化項目では、あらためて国交樹立の公約を明記し、テロ支援国家指定削除に関しては、「作業部会を通じて到達したコンセンサス」に基づき「朝鮮の措置と並列的に(テロ支援国家指定から削除するという)朝鮮に対する公約を完遂させる」としている。 表現こそ婉曲的だが、関係正常化に向けて本腰を入れ始めた朝米双方の思惑が見え隠れする。 −対日 安倍政権崩壊に言及 初旬までは、安倍政権を非難する従来通りの論調が続いた。辞任後は、一週間後の20日に民主朝鮮が「新たな混乱状態に陥った日本」と題する記事を掲載したが、政権崩壊過程の客観的な報道に終始した。 続く22日には労働新聞が「急激な混乱に陥った日本政局」と題する記事を掲載。「何のために安倍が突発的に辞任意志を表明したか」と前置きし、「体調不良や参院選惨敗、指導力低下などの理由が挙げられているが、真偽のほどはさておき、とにかく安倍の辞任は既成事実化された」と指摘。1年余の短命に終わったのは、安倍政権が完全な失敗であったことと彼の政治的運命の凋落を意味するとした。 また、「安倍一味が前例のない反朝鮮騒動を起こした目的は、国内政策の失敗による国民の不満を他方にそらすためであった」とし、さらには、「対朝鮮敵視感情を最大限に煽ることによって自らの権力基盤を築き、軍国主義化のための有利な社会的環境と条件を整えるためであった」と総括した。 そして、「安倍が辞任したのは結局、無分別な『改革』に代表される反人民的施策と対朝鮮敵視政策の帰結である」と断じ、「日本の政治家たちは、安倍の運命から教訓を探さねばならない」と結んだ。 その後も同様の配信が続き、「そもそも権力の座に着いたことが失策」(26日、労働新聞)などと、厳しい論調が続いた。 ほかには、「日本は対朝鮮敵視政策を棄てねばならない−制裁延長」(25日、民主朝鮮)、「寝言のような野望−テロ特措法延長企図」(27日、労働新聞)などのテーマを扱った。 新政権発足に対する言及はとくになかった。 −対南 「反統一勢力」を非難 朝鮮中央通信を通じて配信されたのは、「統一機運に禍をもたらす逆賊行為−李明博の首脳会談誹謗」(16日、民主朝鮮)、「告発状−北南首脳対面を非難するハンナラ党」(28日、祖国統一研究院)の2本のみであった。 北南首脳対面・会談を控え、「反統一勢力」の無責任な言動を指摘した。 ■ 第6回6者会談第2ラウンドの合意文書には、朝鮮の現存核施設年内不能化や関連国家間の関係正常化問題、朝鮮に対する経済、エネルギー支援問題などが盛り込まれた。 文書をうけて高村外相は、「テロ支援国家指定解除の期日が明記されなかったのは、日本の拉致問題に米国側が理解を示したからだ」と述べ、今回の合意を「評価する」とした。 米国が日本側に理解を示しているのかどうかはわからない。「リップサービス」ではないか、と暗に指摘する向きもある。 米政府に対して事あるごとに「拉致問題」を強調する日本。そのつど、米国側も「忘れていない」を繰り返している。 このやりとり、デンマークの童話「裸の王様」を想起させる。 「服」の出来栄えを気にする王様は、周囲の「リップサービス」を鵜呑みにし、自身の裸姿に気付かなかった。 テロ支援国家指定解除は、そもそも朝米2国間の問題だ。解除の期日は、当事者である朝米双方が決めればよい。日本側に配慮する必要はない。 福田首相が賢明な政治家なら、安倍政権と同じ轍は踏まないだろう。(まとめ=韓昌健記者) [朝鮮新報 2007.10.26] |