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在日朝鮮人のデモ隊を街頭で支援して 野上邦

「総連への不当な弾圧許すな」 見事な行進、迫力と熱気に鼓舞

日本の市民たちに強い印象を与えた力強い在日の若者たちの姿

 わたしは3月3日の「総連と在日同胞に対する不当な政治弾圧、人権蹂躙に反対する集会」と10月10日の「日本政府の不当な制裁措置延長に反対し、総連と在日同胞への弾圧を糾弾する在日本朝鮮人中央大会」のデモ行進を、3月には鍛冶橋、10月は数寄屋橋交差点で出迎え、そこに集まった人々と共にデモ隊に声援を送りました。

 国家権力を総動員した無法な日本政府の弾圧に対する抗議と怒りが熱気をもって伝わる迫力ある見事なデモに目を見張り、鼓舞される思いでしたが、とりわけ印象に残ったのは、民族学校の若者たちの生気に満ちた表情とさわやかな笑顔です。そしてまた、沿道でデモを迎えるわたしたちに対して「ありがとうございます」と声をかけつつ進む人々の姿でした。

日本の若者と対照的

デモ隊を待つ日本市民たち

 まず、行進する若者たちの闘うべき対象を確かに見据えた明るい表情は、必然的に日本の若者たちの、これとはまさに対照的なありようをわたしに思い起こさせました。

 新自由主義のもと、支配階級のイデオロギー攻勢に難なく絡めとられ、資本主義の末期症状が生み出す頽廃文化の中に浮遊している多くの日本の若者たちを。

いま噴出している数多の「不祥事」や安全無視の鉄道、航空事故などの元凶が新自由主義「改革」そのものであるのはむろんのこと、1987年の国鉄分割、民営化で不当解雇された1047人の解雇撤回を求める闘いが、雇用、年金、医療などすべての面で不安を抱える現在の自分の問題につながることに全く思い至らず、先頃の新宿駅頭での闘争団の街頭行動、ビラまきにも無関心そのものの若者たち−。

歴史認識の欠如

デモ隊にエールを送る日本の市民たち

 10月24日付朝日新聞のコラムに、安倍前首相が辞任した日にTOKYO−FMの行った聴取者アンケートの結果が載っていました。安倍辞任を「どう思うか」に対して「同情する。もっとがんばってほしかった」が74%だったそうです。主な聴取者層は20代から30代で、この番組は、この世代を中心にした街の「肉声」を毎日多数集めていて、そうしたリスナーという偏りのあるデータではあるそうですが、この74%の聴取者は、いったい安倍に何をがんばってほしいのか。憲法に規定された基本的人権を奪い、戦争のできる国家へとひた走る壊憲右翼強硬派、そのための朝鮮敵視政策の最も悪質、露骨な推進者としての安倍が、自分たちのうえにもたらす事態の深刻さに無知であるとしか言いようがない。

 しかし、考えてみれば戦後、政府・文部省(現在は文科省)により執ように続けられ、今とりわけ悪質な形で進行している歴史のわい曲・偽造、アジアへの侵略戦争の美化と真実の隠ぺいに対して、わたしたちが力の限り闘い、阻止することができなかった結果生じた歴史認識の欠如、とりわけ、日本による朝鮮への植民地支配の歴史に対する無知と空白こそが、右のような思考停止を生んでいるのであり、それは若い世代だけでなく日本人全体の問題です。

草の根ファシズム

日本市民に手を振る女子生徒

 朝鮮半島の分断をもたらした日本の植民地支配とその中で植えつけられた日本人の根深いアジア人蔑視を根本的に反省、検証する途を棚上げしてきたことが、安倍による総連や民族学校への理不尽な弾圧を許し、福田新政権の朝鮮に対する「制裁」延長の非道をも許してしまうような、現在の日本にまん延する草の根ファシズムにつながっているといわねばなりません。

 わたしはこうした日本政府の無法、不当な政治弾圧を阻止しえずにいる日本人のひとりとして、デモの隊列の人々−時には女性が涙を浮かべて、沿道で迎えるわずかな数の日本人に「ありがとうございます」と心から表明してくれるのに対して、返すことばもないような心苦しさを覚え、涙がこぼれそうでした。

 統一と平和の構築に向かって闘う朝鮮半島の人民と連帯し、新自由主義改革と軍事大国化路線の帰結である壊憲策動を阻止する闘いを広げることがわたしたちに課せられた責務だとの思いをいっそう強くしました。(本郷文化フォーラムワーカーズスクール、写真も筆者提供)

[朝鮮新報 2007.10.29]