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朝鮮の論調 10月

 10月2〜4日、南の盧武鉉大統領が訪北した。金正日総書記との対面・会談が行われ、「北南関係の発展と平和・繁栄のための宣言」(10.4宣言)が調印された。また、10月3日には第6回6者会談第2ラウンドの共同文書が発表され、11日からは合意にそって米の核専門家チームが平壌に到着。また、10月中旬には北京での朝・日非公式協議が報じられ、29日からは「経済およびエネルギー協力」作業部会が始まった。30日には、海賊に襲撃された朝鮮の貿易船「テホンダン」号救出に米海軍駆逐艦が尽力。また同日、南の現代グループ会長一行が平壌入りした。

−対米 テロ支援国リスト削除 6者の合意と強調

 5日に第6回6者会談第2ラウンドに関する報道があった。

 朝鮮中央通信は、「2007年末までに朝鮮が核施設を無力化する代わりに、米国は朝鮮をテロ支援国家リストから削除する」との内容を明確に報じた。

 6日には、国連での朝鮮代表の演説内容を配信。

 「民族の尊厳を守るためには、先軍政治をもって自衛的国防力を強化していく以外に選択肢はない」とし、「朝鮮の自衛的国防力は、徹頭徹尾、国と民族の自主権を守るためのものである」とした。

 また、国連安保理に対して「…特定大国らの戦略的利害関係実現を合法化する道具になってはならない」と釘をさした。

 22日にも国連演説の内容が配信された。

 その中で「米国の根深い対朝鮮敵視政策こそ、朝鮮半島とアジア地域に存在する不安定要素の根源である」とし、「9.19共同声明の完全な履行は、米国と日本が対朝鮮敵視政策を解除する実際的な措置をどうとるのかにかかっている」とした。

 そして、「米国は6者が合意したとおりに朝鮮をテロ支援国リストから削除しなければならない」とあらためて指摘した。

 30日には、「『第3次世界大戦』は誰がもたらすのか」と題する民主朝鮮の記事を報道した。

 その中で核問題について言及し、「原則的に核拡散を防止するにおいては、ひとつの基準を適用しなければならない」とし、「ある国は核兵器を保有してもよく、ある国は核兵器を保有してはならないという二重基準は、絶対に通じない」と主張した。

 また、米国に対して「他国の核問題をうんぬんする以前に、世界平和と安定を破壊している自らの覇権政策の危険性をしっかりと認識しなければならない」と指摘した。

−対日 敵視政策転換の決断を促す

 労働新聞に掲載された「日本特有の鉄面皮な行為」と題する記事を11日に配信した。内容は「拉致問題」に関するもの。

 「過去、アジアを侵略した犯罪国である日本に拉致問題をうんぬんする資格はない」と前置きし、「この問題はすでに朝鮮の誠意ある人道主義的努力によって解決した問題である」と強調。また、「日本が拉致問題で騒ぐのは、(この問題を)自らの不純な政治的目的実現のためのカードにしたいがための術策にすぎない」と断じた。

 現政権に対しては、「先任の『拉致内閣』がたどった哀れな末路から相応の教訓を得なければならない」と呼びかけた。

 また、24日にも「前任者の轍を踏む幼稚な行動」と題する労働新聞の記事を配信し、対朝鮮経済制裁延長を非難した。

 その中で、「制裁騒動は、敵視政策の集中的表現だ」と指摘し、「国同士の関係は信頼を前提にする。一方が他方に圧力をかけたとしても、決して解決されることはない」と強調。「百害無益な敵視政策を変える政治的決断」を下すように促した。

 ほかには、自衛隊海外派遣の合法化や文化財の返還問題を配信した。

 新政権発足後、全体的な語調は、ややトーンダウンしている。「倭」「島国」といった表現も見られない。

−対南 北南関係で「民族同士」強調

 北南首脳の対面・会談の模様は2〜4日にかけてタイムリーで配信された。

 2日には、盧大統領の到着と歓迎晩さん会の記事を配信し、3日には首脳会談と同日夕に行われた盧大統領主催の宴会の模様を伝えた。続く4日には、8項目からなる宣言の全文を配信した。

 宣言の特徴としては、文中に「民族同士」「民族自主の原則」「北と南が協力して」といった文言が目立っていたことが挙げられる。また、長文にわたる宣言の量にも驚いた。事務レベルでは遅々として進まない諸懸案を、首脳同士の会談によって一気に解決へ導いたとの印象を受けた。

 対朝鮮政策をめぐって米日関係の隙間に風が吹いているようだ。

 強固な同盟国として蜜月を送ってきたはずの両国が、6者プロセスをめぐって足並みがそろわない。

 日本は、なぜ「拉致問題」に固執するのか。朝米関係が進展し、朝鮮半島の非核化が実現すれば、何か困ることでもあるのか。

 ここで想起されるのは、朝鮮の核実験直後にみせた日本政界の反応だ。「(核保有の)議論ぐらいは別にいいのではないか」といった趣旨の発言が相次いだ。

 核保有が日本の本音だとしたら、朝米関係の進展は日本にとって困る。核保有の大義名分を得る千載一遇の機会を永劫にわたって失うからだ。

 一方、米国が貫く政策は「核拡散の阻止」だ。日本列島を覆っている「核の傘」もそのためで、日本に核保有の「理由」を与えないというところに第一義的な目的があることは多々、指摘されてきたことだ。

 「核」をめぐり水面下で米日双方の思惑が衝突しているとしたら、「拉致問題」に固執する日本の態度は、6者の進展を阻む人為的な障害作りにすぎない。

 日本権力支配層の中枢には、核保有に対する「懸想」が半世紀以上にわたって連綿と燻り続けているとの見方がある。つまり、核兵器さえあれば、戦争に負けることもなく、「大東亜共栄圏」を打ち立てることも可能であったろう…と悔恨しているというのだ。

 とすれば、教育基本法改正、憲法9条改悪論議、自衛隊海外派遣の合法化策動など日本が推し進めている一連の軍事大国化は、この悔恨に端を発しているとも言えよう。

 日本は、表面上は虎(米国)の威を借りているようで、その実は虎の威からの脱却を眈々とうかがっている。虎と同様の腕力(=核兵器)さえあれば、不可能なことではない−。

 化けの皮が、剥がれかけている。(まとめ=韓昌健記者)

[朝鮮新報 2007.11.28]