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民話、ファンタジー、創作童話 民族情緒たっぷり、家族愛テーマにした作品も

子どもの本棚

 窓の外では北風がヒューヒュー。寒くて外遊びができない日は、子どもにストレスがたまりやすい。そんなときは暖かい部屋の中で絵本の読み聞かせてあげよう。

 お正月のお年玉をまだ大切そうに持っている子どもには、絵本の「おかいもの」をすすめてみても良いかもしれない。取り上げた絵本は一般書店ほか、コリアブックセンターでも注文できる。問い合わせ=コリアブックセンター(TEL 03・3813・9725、FAX 03・3813・7522、Eメール=order@krbook.net)。

「黄牛のおくりもの」−黄牛と小ねずみの愛情物語

フォレストブックス、TEL 03・3353・9346、1500円+税

 ある真夜中のこと、寒い牛小屋に住む黄牛を訪ねて1匹の小さなハツカネズミがやってきた。

 ハツカネズミは母親をなくした幼い弟たちのために、黄牛のかいばいれの中の残り物をもとめてやってきたのだ。

 黄牛はハツカネズミの事情を知って温かく迎える。

 「はやくかいばいれの中の残り物を持っていくといい。弟たちが待っているんだろう。わしの背中を通ってはやく帰っておやり」「一度にみんな持っていけないだろう。おなかいっぱいになるまで何度でも運んだらいい」と。

 弟たちのために14回も黄牛の背中を通ってかいばいれの中の残り物を家に運んだハツカネズミに、黄牛は「もう、お腹いっぱいになったかね?」「じゃあ、今夜はぐっすり寝て、明日またおいで」「弟たちと一緒に来て、ごちそうをお腹いっぱい食べるといい」とやさしく声をかける。

 弟たちは、黄牛のかいばいれに入ってごちそうをお腹いっぱいたべた。

 南朝鮮を代表する童話作家のクォン・ジョンセン、チョン・スンガクの絵で贈る「黄牛のおくりもの」。

 小ねずみの兄弟を慈しむ黄牛の愛が心に迫る。

「きょうは ソンミの うちで キムチを つける ひ!」−キムチ作りの手順がわかる

セーラー出版、TEL 03・3846・2955、1500円+税

 今日は、ソンミの家のキムジャンの日。ソンミもキムチを漬けるのを手伝います。裏庭に住んでいるねずみの家でも、ソンミの家のまねをしながらキムチを漬けてみることにしました。おいしいキムチができるでしょうか…。

 朝鮮半島では、秋の終わりごろにひと冬食べる分のキムチをまとめて漬ける「キムジャン」という行事がある。この日は家族、親せき、近所総出で力をあわせて大量のキムチを漬け込む。

 おはなしはキムチの作り方をハルモニがソンミに教え、それをネズミのこどもがオンマ(おかあさん)に伝え…という具合に、くり返される。白菜を粗塩で塩漬けして、一晩じっくり寝かせたら、水で白菜を洗い、大根、にんにく、もち米、セリ、からし菜、とうがらしなどでキムチの「具」を用意する。塩を少々、砂糖も少々、塩辛に海老やカキも入れてよーくかき混ぜる…。読み進んでいくうちに、いつしか自分もキムチを漬けているような気持ちになってくる。

 明るい色彩、はずむような筆のタッチは、一家総出のキムチ作りのお話をとても楽しいものにしている。

 巻末にはキムチの歴史、種類などを紹介した解説付。

パンを食べるとふわふわふわり−「ふわふわくもパン」

小学館、TEL 03・5281・3555、1500円+税

 なんともユーモラスな絵本である。ページをめくりながら思わずほほえまずにはいられない。

 おはなしはある雨の朝からはじまる。

 先に目覚めたネコのお姉ちゃんは弟を起こし、レインコートを着て外に出る。そして、庭で小さなくもをみつける。

 そのくもをママに渡すと、ミルクや水やイーストを混ぜて、パンを焼いてくれた。焼きあがったパンは、ふわりふわりと浮かび上がる「くもパン」に! それを食べると、体もふわりと浮かび上がる。

 兄弟は、「雨の日は道路が混む」といって朝ごはんを食べずに会社に出かけたパパにくもパンを届けるために空を飛ぶ。パパを乗せたバスを見つけて、今度はパパもいっしょに会社まで飛んでいく。

 紙人形を写真にとることで不思議な空気をつくりだしつつ、温かみのある作品に仕上がっている。「半立体技法」という独自の技法で作られた絵本の原画は、2005年ボローニャ国際絵本原画展に入選した。

 こんな雨の日ならどんなに楽しいだろう。家族思いの小さな兄弟のささやかな冒険がかわいらしい。夢があふれる絵本。

朝鮮の子どもが大好きなおはなし−「いっしょに ごはんたべよ」

平凡社、TEL 03・3818・0874、1600円+税

 兄さんにお米をわけてもらいにでかけたカエルくんは、その道々、困っている生きものたちに出会う。先を急いでいるのにカエルくんはみんなを助けてあげる。すっかり日のくれた帰り道。今度はカエルくんがいくつもの困ったことに遭遇し…

 おはなしは平安北道生まれのペク・ソクさん、絵は忠清南道生まれのユ・エロさん。本書は1957年に朝鮮で出版された「はさみむしの4兄弟」に収録された作品である。そのおはなしに南の絵本画家が絵を描き、6.15共同宣言発表後の2001年に南で出版、日本語訳は在日2世が担当した。

 カエルやカニ、虫たちが登場して野山で繰り広げられるできごとが扱われている。彼らが民族衣装を着ているのも興味深い。ページごとに描き込まれた花や草は日本で暮らす私たちにもなじみ深いものである。

 最後は題名通り、みんなで楽しく「ごはんを食べる」。小さな生き物同士が助け合い、円座になっていっしょにごはんを食べる光景はなんとも幸せでほほえましい。

 北と南の子どもたちが大好きなこのおはなしを、在日の子どもたちにもぜひ読ませたい。

[朝鮮新報 2007.1.12]