〈第29回在日朝鮮学生「コッソンイ」作文コンクールから〉 初級部4年生散文部門 |
「青いネクタイ」 さる4月、4年生に進級したぼくの胸ははずむように高鳴りました。 (ぼくはついに少年団に入団するんだ) 楽しいキャンプ、北関東の宿泊講習、そして、何よりもぼくが大好きなサッカークラブ…。入団式をむかえる前に考えただけでも楽しかった。 けれど、ある日先生がこんな話をしました。 「悪い子は赤いネクタイではなく、青いネクタイをもらって少年団に入団します。チャングン、気をつけなさい」 はじめは冗談だとばかり思っていました。 (でも、なぜ先生はぼくにだけ青いネクタイの話をしたんだろう? ミョンジュンやポラムやリナには言わないのに…) しばらく考えていたぼくは、その答えをこう見つけました。 (それはぼくがいたずらっ子だからだ! そうだ、それしか考えられない!) ぼくはいつも授業中に大きな声を出したり、いたずらばかりして先生にしかられることが多いのです。だから先生はぼくがいたずらをやめるようにあんなことを言ったのだと思いました。 (青いネクタイなんて見たことない。信じないぞ、フン!) だけど、ぼくの不安はだんだん大きくなりました。ぼくの不安が大きくなった原因は4年生のトンム(友だち)たちにもあります。 ポラムはぼくの絵をかくときに必ず青いネクタイを一緒にかき、リナはぼくを「青いネクタイさん」と呼びました。ミョンジュンまでぼくの耳元で「青いネクタイ!」といつもささやきます。 ぼくの心の中では、たまった不安が頂点に達しました。 そのうち少年団入団式の日がだんだん近づいてきました。 ぼくは心配になって、授業にくる先生たちに聞いてみました。 「先生、青いネクタイは本当にあるんですか?」 「10年前にとってもきかんぼうだった子が青いネクタイだったよ」と、どの先生に聞いてもまじめな口調で言いました。それでぼくはすっかり青いネクタイの話を信じるようになりました。 (このままでは本当に大変なことになるぞ) その日から赤いネクタイをもらうため「良いこと」をしようと決めました。廊下に落ちたゴミを拾ったり、宿題も全部しました。 (これだけ良いことをしたら、先生たちももう、青いネクタイの話はしないだろう。ヘヘ…) ついに運命の入団式の日が来ました。 入団式の式場に向うぼくの胸は期待と不安でふるえました。お兄さん、お姉さんたちが集まり、かっこ良く敬礼をしました。 「入団者の名前を呼びます」 ぼくの胸は張り裂けそうでした。 「ヤン・チャングン!」 「はい!」という返事が、のどに引っかかって変に高い声が出てしまいました。みんなの笑い声が聞こえて顔がトマトのようになりました。 「少年団ネクタイを贈呈します」 (青いネクタイだろうか? 赤いネクタイだろうか?) ぼくは怖くて目をギュッとつむりました。中級部のお姉さんがネクタイをしめてくれました。ぼくはおそるおそる少しずつ目を開けました。 すると、まぶしいくらいに光る赤いネクタイが見えました。 (わぁ! 赤いネクタイ!) 青いネクタイじゃないという安心感と、赤いネクタイをもらった喜びでぼくの体は飛んで行きそうでした。 「チャングン、青いネクタイの話は冗談だよ。チャングンが宿題をよくしてきたり、ゴミ拾いをする姿をよく見たよ。少年団に入団したぶんだけおりこうさんになるよう期待しているよ」 入団式を終えたぼくに先生が言いました。 ぼくはなぜ先生が青いネクタイの話をしたのかわかりました。それは、ぼくが良い子になることを期待して言ったのでした。 これから自分のことは自分でする、たのもしい少年団員になるため、よく学び準備して行きます! (楊昌根、群馬初中) [朝鮮新報 2007.1.19] |