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〈本の紹介〉 季刊「前夜」10号 特集 靖国・教育・天皇制

不服従の人々の輝き

 季刊「前夜」10号が「戦後」のリミットに立って、安倍政権に対峙してと題して「靖国・教育・天皇制」の特集を行っている。冒頭の座談会は、この問題を語るのにふさわしい発言を続けてきた識者たちである。高橋哲哉・東大教授、鵜飼哲・一橋大教授、ノンフィクションライターの田中伸尚氏。

 3者の論点は、「戦後レジューム」からの脱却を掲げて登場した「極右」安倍政権への集中批判である。

 高橋氏は、改憲が実現し、自衛隊が自衛軍になり、新しい日本軍ができる。靖国神社の国営化がされ、武力行使した新日本軍から戦死者が出たときには当然合祀されることになる。さらに教育基本法が改悪され、戦争を支える教育体制が作られようとしている、と強い危惧を表明する。

 また、鵜飼氏の指摘も手厳しい。同義的にこんなに壊れている人たちが言う愛国心だのなんだのが、はたして戦前並に通用するのだろうか、と問いながら、「社会が、人間がいっそう壊れるだけだと予想する」と指摘する。そして同氏は「北朝鮮の核実験以降、外部に敵を作り出して内部を統制するプロセスに完全に入ってきたこと、そうした文脈での教育基本法改悪であり、靖国問題だということをおさえなければならない」と強調する。

 田中氏は、靖国の合祀取り消し訴訟について触れながら、これは植民地支配された被害者と加害者の側が橋を渡しながら、40年にわたる市民の運動の積み重ねのなかから生まれた問いであると評価し、「不服従している人たちのこうした鮮やかさは、こんな暗い時代でも輝いている」と語っている。

 本誌でもっとも読み応えがあったのは、昨年亡くなった詩人・茨木のり子さんの「四海波静」と題する詩。激しい反戦歌であり、羊のようにおとなしい現在の世相を撃つ人間の精神がみなぎっている。ぜひ、一読を。(NPO法人「前夜」、1400円+税、FAX 03・5351・9267)(公)

[朝鮮新報 2007.1.20]