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〈みんなの健康Q&A〉 アルコール依存症(中)−からだの病気

 Q:アルコールの作用について話してください。

 A:お酒を飲んで酔っ払うと、泣き上戸、笑い上戸に怒り上戸とその変化はさまざまです。お酒を飲むと、その時の気分に応じて気分が良いと明るくなったり、逆に悩み事があれば落ち込んでしまったりします。

 アルコールには大脳を麻痺させる作用があり、人の「理性、感情、本能」の順に麻痺させます。日頃は大人しい人が、お酒を飲むと明るくなったり、おしゃべりになったりします。これは大脳にある人間の理性を担当する部分(大脳新皮質)の働きがアルコールによって鈍くなるからです。すると大脳新皮質の支配が緩んで、本能、感情をコントロールしている大脳旧皮質の働きが活発となり、理性を失い興奮したりするのです。旧皮質が活発になると、本能や感情が強く表に現れてきます。ですから日頃、気の小さい人が酒を飲むと妙に気持ちが大きくなって、日頃は我慢していたうっぷんを一気に吐き出したりして、周囲を驚かせたりします。これは「脱抑制」と言って、理性というブレーキが効かなくなる状態なのです。

 そしてさらに飲酒量が増え、症状がすすむと、禁断症状が出現することがあります。

 Q:どんな症状が出るのですか。

 A:お酒を飲まずにいると怒りっぽくなったり、イライラ、不安感が生じ、落ち着きがなくなり、ひどい時には手が震えたりもします。

 これは精神的、身体的依存と言い、「アルコールが切れた状態」で心と身体がアルコールを欲しがっている信号なのです。

 この禁断症状もアルコールを飲めばピタリと止まります。

 飲み方や個人差で違いが有りますが、毎日5合以上の大量のアルコールを飲み続けた場合、5年から10年で禁断症状が起こるとされています。

 Q:飲酒によって引き起こされる病気について教えてください。

 A:最もよく知られているのは肝臓障害です。

 お酒を飲み過ぎると、まず極軽度の脂肪肝という状態が出現します。これは肝臓の細胞の中に脂肪が貯まってくる状態で、どんな人でも大酒を数日間続けただけで生じると言われます。大部分は無症状か、人によっては疲れやすさを感じる程度であり、断酒しさえすれば数週間で正常な状態に回復します。しかし大量の飲酒を続けていると本格的な脂肪肝となります。

 さらに飲酒を続けると、初めは腫大していた肝臓は次第に萎縮し、肝臓全体は小さく硬くなってしまい、肝硬変の状態に至ります。このような変化がいったん生じてしまうと、たとえ断酒しても完全には回復しません。肝硬変になっても初期には無症状のことも多いのですが、次第に疲労感、腹部膨満感、食欲不振などの症状が出現してきます。

 さらに進行すると、黄疽、腹水、浮腫などが現れ始め、食道の静脈が破れて大出血を起こして死亡することも稀ではありません。

 Q:怖いですね。ほかにはどのようなものがあるのですか。

 A:案外知られていませんが重要なものに、アルコール性の膵炎があり、激烈な疼痛発作を反復したり、あるいは徐々に悪化して慢性膵炎になったりします。

 これに「万病の元」と言われている糖尿病が合併することが多いのです。

 ガン(肝臓、食道、胃など)は過剰飲酒者では格段、高率に発生します。

 また、過剰な飲酒行動をとり続けていると、自分の飲酒行動をほかの人の責任にしたり、自分自身を責めたりするようになります。その結果、自己中心的でわがままで「他人が原因だ」と他罰的性格傾向が強まります。その反面、自分を責め、罪責感、後悔、不安、孤独から自殺にはしることすらあります。

 (駒沢メンタルクリニック 李一奉院長、東京都世田谷区駒沢2−6−16、TEL 03・3414・8198、http://komazawa246.com/)

[朝鮮新報 2007.1.25]