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〈第29回在日朝鮮学生「コッソンイ」作文コンクールから〉 初級部5年生散文部門

「おとなりさん」

 私の席は最前列。

 そう、教室では特等席です。

 今度も「おとなりさん」は、リ・ジョンソクくんです。

 いたずらっ子で有名な友だちです。

 けれど、何度も「おとなりさん」になっているので何だか安心しました。少しも嫌ではなかったんです。

 それで、私は授業中にジョンソクを助けてあげようと思いました。

 でも、ジョンソクはいつも先生の話をちゃんと聞いていないし、遊んでばかりいるので本当にあきれてしまいます。

 私にはジョンソクのそういう行いがときには苦々しく思えることもあるんです。そういうときはひどく怒ってもみるんだけど、なぜか次の日になると忘れてしまいます。

 私はよっぽど心が広いみたいです。

 ジョンソクも何事もなかったように私を見て、ただニコニコ笑ってすごします。

 そんなある日、私が本気で怒ったことがありました。

 日本語の時間でした。先生は教科書の登場人物を人形で作って劇をしてみようと言いました。

 私は(人形をうまく作れるかしら? 人形劇はどういうふうになるんだろう?)と、不安になりました。だけど一生懸命準備しようと思いました。

 なのに、うちのグループのみんなが一生懸命練習しようとしているとき、ジョンソクだけふざけているではありませんか。そうしているうちに時間が過ぎて、人形を完成させられなかったグループは家でやってくるようにと宿題を出されてしまいました。

 なのにどうしたことでしょう! 次の日、ジョンソクは割り当てられた宿題をすっかり忘れただけではなく、後ろに座ったキルソンとおしゃべりばかりしているではありませんか。私の気持ちはとてもあせってきました。

 ついに発表の日になりました。

 「もう! ジョンソク、何してるのよ。今日は発表の日でしょ!」

 「うん、大丈夫。あと5分だけ待って!」

 「え?! あなた本当に…この昼休みが終わったら、すぐうちらの発表の番じゃない!」

 こんなふうに言い放って私はジョンソクから材料をうばい、代わりに人形を作り始めました。それを見ていたジョンソクは「ありがとう。じゃあ、これもおねがい」と言うではありませんか!

 私は目から炎が噴き出し、胸の中は活火山のように熱く煮えたぎる思いでした。

 瞬間、耐えきれずに私はジョンソクを叩いてしまいました。

 自分が宿題を忘れたのに、自分のことを人に任せるなんて、ジョンソクがにくらしくてしょうがなかったからです。なのにジョンソクは、私が叩いたのにこりもせず、相変わらずケラケラと笑いながらふざけているではありませんか。これをどうしたものか?…。

 そうしているうちに、私たちのグループの発表の番になりました。

 でも、人形劇をいざ始めると、ジョンソクがとてもかっこよくするではないですか。

 (2人でしなくちゃいけない宿題を私だけに任せてふざけていたジョンソクが、こんなに発表がうまいなんて?!)

 私は驚きとともにとてもうれしくなりました。(ジョンソク、よくやったね!)

 無事終えられた安心感でジョンソクに対する怒りの気持ちが一瞬にしてなくなってしまいました。

 そんなある日のことです。

 地理の試験が終わってみんなそれぞれ自分のことをしたりして遊んでいるところ、私は本を読んでいました。

 後ろでもめてる声が聞こえてきました。テヒとヨンギルがはげしく言い争ってました。

 事情を聞いてみると、ヨンギルがほかの子たちとヒソヒソ話をしていた内容をテヒが知りたがったのに教えてあげなかったと言って口げんかがはじまったみたいです。

 これはすぐにクラスの問題として取り上げられました。たくさんの意見が行き交う中で、意見は2つに分かれました。ひとつは、関係ない話にむりやり入っていこうとしたのがいけなかった。もうひとつは、ヒソヒソ話をするのがいけなかった、というものでした。

 その時です。静まり返った教室に「はい!」というジョンソクの声が高くひびきました。

 「ぼくはいくら考えてもどんな内容であれ他人の前でヒソヒソ話をするのはまちがっていると思う! お互い信じられなくなるじゃないか! そういうことはやめよう!」

 そのときのジョンソクはいつもとはちがう、もう1人のジョンソクでした。

 あまりにもかっこよくてしっかりと話すジョンソクを見て、みんながおどろきました。それで、必ずそうしようと約束してクラス会はジョンソクの大活躍で幕を下ろしました。

 私はわかりました! いつもジョンソクの周りに友だちが集まるわけがわかりました!

 授業中は遊んでいて話をよく聞いておらず、休み時間になるとどんないたずらをしようかと新しい遊びをいつも探しているジョンソク。こんなジョンソクが学芸会のときには「ウリマル・レンジャー」になってたくさんの人を笑わせるコメディアンになり、絵をかくときには優れた腕前で美術展でいつも賞を取る美術家にもなります。

 いたずらっ子のジョンソクは、私たちを怒らせることもありますが、このようにいつも楽しみをくれ、温かい気持ちにさせてくれます。

 よくよく考えてみると、ジョンソクは私にとって一番よい「おとなりさん」なのかもしれません。

 ジョンソクは私をどう思っているかなぁ…。

 いいえ、私たちはおたがい、まちがいなくよい「おとなりさん」です。(翻訳、編集部)

(崔美英、東京第4初中)

[朝鮮新報 2007.1.26]