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〈みんなの健康Q&A〉 アルコール依存症(下)−対処法

 Q:アルコール依存症の怖さはまだほかにもあるのですか?

 A:いくつかあります。梅酒作りで青い梅の実を焼酎に漬けると、実は次第にシワシワに縮んできます。つまりそれと同じことがわれわれの脳でも起こっているのです。酒を飲んだ翌日に無性に喉が乾いた経験はありませんか?

 これは飲酒後に起こる脱水症状なのです。もっともこの脱水症状は水分補給で回復します。しかしアルコールを大量、なおかつ長期間摂取することで、次第に脳にもダメージが蓄積します。そのような人たちはCT、MRIなどで調べると、年令に比べて大脳の萎縮が激しいことが少なくありません。

 Q:アルコールを押さえることはできないのでしょうか。

 A:お酒を止めることの困難さは、アルコール自体が手軽に入手できることにも原因があります。覚醒剤やコカインなどの違法ドラッグは、それを乱用すれば犯罪であり、一般的には入手できないものです。覚醒剤などより、はるかに依存性の強い薬物アルコールは、最近では業界の自主規制で夜間の自動販売機による販売は控えられていますが、コンビニなどでは24時間、いつでも手軽に入手することができるのです。一度依存を形成してしまった人にとって、毎日が断酒との戦いのようなものです。お酒を止めようと思っても、再飲酒の落とし穴が町中にあふれているのです。

 Q:具体的な対処法について話してください。

 A:ほかの全ての病気と同じように、アルコール依存症も早い時期に治療を始めれば、それだけ回復も容易です。しかし、アルコール依存症という病気の特徴である、自分の病的な状態を認識しにくいことから、病気がかなり進行してから専門の病院を受診する人がほとんどです。アルコールは法的に認められているものですから、いくら家族が困っても、周囲が心配していても、本人の止める意思がないと治療はなかなか難しいのです。飲んでいる本人はもちろんですが、困っている家族は迷っていないで、最寄りの保健所の「酒害相談窓口」へ相談してみるといいでしょう。アルコール依存症を扱っている精神科の病院などを紹介してもらえます。アルコール依存症は身体と心の両面からの治療が必要となります。身体の方は弱った肝臓などに対する内科的な治療を行い、精神的な治療はカウンセリングや薬物療法を併用します。時には抗酒薬(シアナマイド・ノックビン)を飲んでもらうこともあります。

 Q:抗酒薬を飲むとお酒が嫌いになるのですか?

 A:抗酒薬の作用はALDHの作用を阻害します。結果的に肝臓でのアルコールの分解を妨げ、人工的にアルコールを飲めない身体にするのです。もし抗酒薬を飲んだ後、少量のアルコールが含まれている粕漬け、ウイスキーボンボンなどを食べたりするとたちまち顔は赤くなり、動悸がするようになります。さらに酒を多量に飲めば、生命の危険性もあります。自ら抗酒薬を服薬することによって、その日一日、酒を飲めない状態にしてアルコールの誘惑に負けないようにするのです。ほとんどの人は「晩酌、寝酒で健康的に飲んでいる」という人たちでしょう。しかし、アルコールを不眠やイライラを取り除くための手段にしていると、だんだん飲酒量は増え、依存症となってしまうのです。アルコール依存症に特別な予防法はありませんが、せめて休肝日(飲まない日)をもうけ、ほろ酔い(日本酒なら2合位)程度に、時間をかけて楽しむように心がけてください。

 (駒沢メンタルクリニック 李一奉院長、東京都世田谷区駒沢2−6−16、TEL 03・3414・8198、http://komazawa246.com/)

[朝鮮新報 2007.2.1]