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〈本の紹介〉 アジア現代女性史

女性解放の未来開く志

 アジア現代女性史研究会の立ち上げは、2004年の4月だった。創立メンバーは、女性学に共通の関心を抱きつつ、宗教学、日本史、アジア各地の地域研究、平和学と、専門がそれぞれ異なる数人の研究者。

 研究会は第2次世界大戦終結から現在にいたるまでの約60年をタイムスパンとして、北はモンゴルから南は東ティモールにいたるまで、東アジア全域の女性史を協同して研究しようという志を持って出帆した。

 代表は、藤目ゆき・大阪外国語大学助教授。山川菊栄賞を受賞した「性の歴史学」などの意欲作の著者でもある。

 藤目氏によれば、日本軍性奴隷制問題が90年代にアジアの被害女性本人たちによって告発されるまで、この問題は、日本の女性史研究の世界でほとんど無視されてきた。研究者の世界にも根深い一国主義・自民族中心主義や性暴力のタブー視が、問題化を阻んできた。

 現在、日本の女性史研究者の間では、日本軍性奴隷制問題こそ、重要な研究課題だという認識が定着し、多くの調査と研究が行われるようになった。

 しかし、第2次世界大戦後の戦争と軍事主義の下での女性の経験、冷戦時代から今日にいたるまでの軍隊性暴力をテーマとする研究は、まだ、蓄積が浅い。また、フェミニストによる侵略戦争協力や被抑圧階級の女性に対する差別といった問題の検証を回避しようとする傾向も依然として強い、と同氏は主張する。

 アジアの女性が経験してきた受難と抵抗の現代史を跡づけ、アジアの女性連帯・女性解放の未来を開く女性史に取り組みたいというのが、この会の願いであり、目的なのである。

 この研究会によって創刊されたのが「アジア現代女性史」創刊号と第2号である。目次を見るだけでも「北朝鮮社会と女性の生活」「モンゴル国における女性研究の動向と研究紹介」「東アジアにおける戦争、グローバリーゼーションと移民女性の性的搾取」「米国の純潔十字軍運動と反買春法をめぐって」に関する議論など注目すべき論文が満載である。

 今後のいっそうの奮闘に期待したい。(アジア現代女性史研究会、大阪外国語大学藤目研究室、FAX 0727・30・5025)(粉)

[朝鮮新報 2007.2.3]