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西東京第2初中 50年ぶりの木の剪定

ハラボジたちが大奮闘!

大きな木の幹はロープを巻きつけ下から引っ張りながら切り落とす

 雲一つなく晴れわたった青空の下、授業中なので外で遊んでいる児童は1人もいない校庭に、「アンニョンハシオー(おはよう)」「オー、ワッソー?(来たのかい?)」というハラボジたちのゆったりとした声が響く。

 運動場へ下る階段脇の植え込みでは、全相道さん(72)がすでに、ウィーン、ウィーン、ガ、ガ、ガ、ガ、ガ…と、甲高いチェーンソーの音を鳴らしながら、ヒイラギモクセイの枝を切り落としていた。

 ハラボジたちは孫やひ孫たちのために、昨秋から5回にわたって西東京朝鮮第2初中級学校(東京都町田市)の樹木の剪定をしている。3日に集まったのは14人。

 在日本朝鮮人登山協会名誉会長の金英さん(81)は、「木を切るのは年寄りじゃないとダメ。若い人たちにはうまくできない」と胸を張る。「こういうことは経験がないと。数年後にこの木がどうなるかを想像しながら切らないといけないんだ」。

木の上で作業する人、下で枝を拾う人

 金さんの話によると、校舎前の松の木は、創立以来50年以上も立っているものだという。「この情勢の中、学校が厳しい状況にさらされている。せめて学校を明るく、きれいにして、子どもたちが勉強も、芸術も、スポーツものびのびでき、毎日楽しく通える空間にしようと、仲間たちに呼びかけた。これが朝鮮新報で大きく紹介されれば、年寄りたちが座っているだけでなく、こんなこともできるんだ! と、力がわいてくるかもしれない」。金さんの孫は13人。来年外孫が入学するという。

 ヒイラギモクセイを切っていた全さんの孫は、4月に入学する予定だ。「ぼくらが手を加える前は木が生い茂って真っ暗だった。それをみんなに呼びかけて、ひとつひとつ手入れをしていった。孫が入学する時までに学校を明るくきれいにしたい」。そう言いながら熱心に枝を切る全さんに、ほかのハラボジたちが「切りすぎだよ」「そんな切り方をしちゃあだめだ」と、ダメ出しをする。みな、それぞれ持論があるようだ。

 約6千坪の敷地を持つ本校には、キンモクセイ、サクラ、柳、バラ、紅梅、イチョウ、松、プラタナスなど、十数種類の樹木100余本が植えられている。

地上から15メートルも離れた高台での作業は高所作業車を利用して

 幼稚班横のプラタナスの木に上って作業をしていた崔永学さん(71)の娘は、幼稚班から中学卒業までこの学校に通った。「学校は同胞社会の中心。学校がなくなったら同胞社会もなくなる。学校は同胞たちにとってなくてはならないもの」。

 5年生と中学2年生の孫が通っている゙泰煥さん(72)は、「(高い所での作業は)ガリガリに痩せているから、風さえ吹かなければ大丈夫。家では盆栽をやっている。今は土の入れ替えの時期。こういうことは業者に任せると楽だけどお金がかかる。学校を愛する人たちが集まって、やれることはやっていかなきゃ」と話していた。

 この日は在日2世の李相運さん(56)も仕事の合間を見計らって応援に掛けつけた。「こんなに大掛かりな剪定は学校創立以来初めてのこと。長老たちががんばっている姿を見ると、1世たちがいるうちに、2世も何かしなくては、という気持ちになる」と話した。

10日には運動場の整備も行われた

 天野商会代表の姜正美さん(56)は、作業車3台と従業員を率いて応援にやって来た。この日一番の作業は、運動場に高くそびえるヒマラヤスギの剪定。下から見上げると20メートルはあるかと思われる巨大な樹木の梢めがけて、高所作業車の作業台がゆっくりと首を持ち上げる。

 ヒマラヤスギに上っているのは金雪人さん(52)と鄭在洙さん(72)だ。2人は、朝鮮中央会館とかつての中央学院で造園作業を行っていた「専門家」で、金英さんの「登山仲間」でもある。手前の枝を切り落としながら幹本体にロープを巻きつけ、上から5メートルくらいのところで慎重にチェーンソーを当てていく…。下では木の上から落とされたロープの端を持って、引っ張る準備。「ギィーーーン」という音とともに、木の上を見つめながら少しずつ引っ張っていく。ドサッ! という音とともに舞い上がる砂煙。

大きなヒマラヤスギの切り方を相談する

 4時間目の授業を終えて、全校生徒、児童が運動場に集まってきた。

 木の上を見上げて、「ウワー、すごい!」「どうやって上がったんだろう!」「ハラボジ!」と飛び跳ねながら、歓声を上げる子どもたち。

 「コマッスムニダ!」

 運動場に子どもたちの声が元気いっぱい響いた。

 また、9、10の両日にかけて、上溝石材の崔龍述さん(70)が、子どもたちのためにと砂場を作り、運動場の整備を行った。

 李政愛校長によると、来年度初級部への入学は8人、編入1人、幼稚班には4人の入園が予定されているという。(金潤順記者)

[朝鮮新報 2007.2.15]