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〈本の紹介〉 わが科学の謎

普通の人の目線 出色の入門書

 本書は一言でいえば朝鮮科学史に関する解説書であるが、専門家が書き下ろしたものではなく、申東源氏が教授を務める韓国科学技術院(KAIST)の学生たちのレポートを基にした出色の入門書である。「瞻星台は天文台なのか」「何がエミレ鐘を鳴らすのか」「高麗青磁翡翠色の秘密」「自動時計・自激漏のすべて」「〈東医宝鑑〉の真実を求めて」「水原華城は本当に難攻不落の要塞なのか」「金正浩は誰のために地図を作ったのだろうか」「わが科学100年の発展史」など一般の人たちと同じ目線によるレポートは実に興味深く、図も豊富で楽しい読み物となっている。

 例えば「金正浩は誰のために地図を作ったのだろうか」は、有名な「大東輿地図」がどのような背景で、どのように製作され、その特徴は何であるかについてのレポートである。金正浩には、全国を踏査し地図を完成させたが、国家機密を漏洩するという罪に問われて獄死したという伝説がある。レポートでは、そのような先入観を排して、地図が正確に製作されたのは主要地点の緯度、経緯を知り、以前までに得られていた地図の縮尺をユークリッド幾何学を用いて統一したからであり、また、さまざまな情報を記号によって表示し、使い勝手がいいように南北を22に分帖折畳式にしたことなどが特徴的であると指摘する。さらに、その正確度を見るために現在の地図と重ね合わせたり、金正浩が以前に製作した「青丘図」には独島が表記されていたにもかかわらず、「大東輿地図」にないのはこの地図が陸地の情報を正確に知らしめるために製作されたためである、と一般の人が気になる点もしっかりと押さえている。

 KAISTといえば、浦項工大と並んで南でもっとも水準の高い理工系大学であり、申東源氏にさぞかし優秀な学生たちでしょうと聞いたところ、最初のレポートはいくつかの文献をそのまま写したり、インターネットの記事を張り付けたようなものだったので、現地を訪ね、研究者から直接話を聞くようにと指導してレポートが完成したそうである。今時はどこの学生も同じだと思わず笑ってしまったが、本の出来映えはすばらしく、それ以上に申東源氏の指導があったことをうかがわせる。現在、続刊を準備中とのことであるが、どのようなテーマが取り上げられているのか、期待がふくらむばかりである。(申東源 編、ハンギョレ出版、問い合わせ=コリアブックセンター、TEL 03・3818・9725))(任正爀、朝鮮大学校理工学部教授)

[朝鮮新報 2007.3.30]