絹谷幸二・幸太展 絵画は国境や民族超える翼 |
躍動感あふれるサーカスの楽しさ
日本芸術院会員で東京芸術大学教授の絹谷幸二氏(63)と子息の彫刻家・幸太氏による父子展「双穹の翼」が4日、東京・銀座の日動画廊で始まった(〜13日、日曜日休み)。幸二氏は現代日本を代表する洋画家の一人で、昨年3月末、初めて訪朝した。 今展覧会での幸二氏のテーマは、「サーカス」。伝統あるボリショイサーカス、木下サーカスなどの題材に混じって、昨年、平壌サーカス劇場で見学したときのもようを描いた。その作品は「馬の背で逆立ちする人」「熊チャン大玉ころがし」の2点。ユーモラスで躍動感あふれる作品は、訪れた多くの人の目を引いていた。 幸二氏の画風は純然とした空の青を背景に、限定された形の中に明るく躍動的な色彩で描かれた人物、薔薇、富士などが特徴とされる。アフレスコ古典画(フレスコ画)という壁画技法の日本の第一人者でもある。
今回の幸二氏の作品は、「サーカス」で登場する熊、馬、象、キリン、虎など本来動物が持つ色彩豊かなアート。キャンバスいっぱいに跳躍する動物たちのエネルギーとそこに登場するピエロのような赤やピンクなどの華やかな色をまとった人とのバランスが、スケールの大きさと個性豊かな美を演出しているかのようだった。
幸二氏は「日朝間は現在、政治的にも経済的にもこう着状態が続いている。しかし、絵画には時代や国境、言葉の壁を楽々と超えてしまう翼がある。たとえ2000年前に描かれた作品であろうとも、時間と距離を超えて、われわれは作家たちと対話し、理解しあうことができる。その交流のかけ橋として何かお役に立ちたいと思った」と語り、平壌で観たサーカスの楽しそうな印象を描いたと語った。 さらに同氏は、2月10日、NHKで放映された番組で、平壌滞在中に作った俳句「春浅き大同江に舟ひとつ」を披露したと語ったが、朝鮮の人や自然への変わらぬ親しみが絵画にも込められているようだった。
「悠久な歴史を湛えて流れる大同江と近代的な建造物。都市と自然がマッチした美しい都・平壌が懐かしい。時間がゆったりと、堂々と流れていて、心が癒される感じがした」とふり返った。 中国大陸から日本へと手を差し伸べる海の回廊としての朝鮮半島。「日本は歴史的には聖徳太子の時代から、朝鮮半島からの豊かな文化を受け入れ、交流を進めてきた。日朝間のいまの厳しい状況は、長い歴史から言えば、ほんの一瞬のこと。一日も早く仲良くなれば」と語った。 一方、子息の幸太氏は、チリ、イースター島の巨大石彫文明を研究した新進気鋭のアーティスト。大きな石を素材に、マグマのような巨大なエネルギーを内包した自然の飽くなき力とやさしさを表現した作品に多くの人が足を止めて見入っていた。それぞれの作品は「永遠なる感謝」「友好の架け橋」「生命開闢」と名づけられ、自然や人間に向けられた作家の柔らかなまなざしが印象的だった。(朴日粉記者) [朝鮮新報 2007.4.6] |