〈本の紹介〉 母ちゃん(オンマ) |
「オンマ」と呼ばれた日本人女性の物語 本書の主人公である望月かずは、実在した日本人女性である。東京の高円寺で生まれたが、父に対する記憶はなく、母親は満州で死に、わずか6歳で孤児になった。そればかりか、自分の身さえ売られたという悲惨な体験を持つ。 天涯孤独になったかず。中国人の家で「奴婢」として扱われ、学校にも満足に通えなかった。「ジャンクイ(お嬢さん)」と呼ばれ過ごした母との生活を思い、涙を流しても、恋しい母の姿はどこにもない。 朝鮮戦争のさなか、銃弾に倒れた母親の胸の中で泣く赤ん坊を偶然抱き上げたのをきっかけに、かずは孤児の母親になる。1人から3人、7人、17人…と、その数は倍々ゲームのように増え続け、56歳という短い生涯に133人もの孤児を南朝鮮の地で育て上げた。 貧しい生活の中で、習い覚えた理髪業で生計を立て、それでも子どもたちの養育費が足りない時には、病院に行って自分の血液を売りながら子どもたちを育てた。 「卑屈になるな。人には幸せになる権利がある」と子どもたちに言い続けたかず。「オンマ」と呼ばれた日本人女性の生涯を描いたヒューマンドラマ。(河出書房新社、1700円+税、TEL 03・3404・1201)(潤) [朝鮮新報 2007.4.17] |