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〈みんなの健康Q&A〉 救急蘇生法

 Q:最近、駅や空港、スポーツ施設などで「AEDを設置しています」という表示をよく目にしますが、これはなんでしょうか。

 A:それは自動対外式除細動器のことで、致死的な不整脈におちいった心臓を正常な拍動にもどす器械です。俗にいう電気ショックですね。

 Q:医師でなくても使用できるのですか。

 A:はい、2004年7月にAEDの使用が一般解禁され、医師あるいは救急救命士でなくても使えるようになりました。つまり、その場に居合わせた一般市民がこれを使うことで救急患者を助けることができるというわけです。医師の到着を待ったり、病院への搬送に時間をかけていては間に合わないことがあるからです。

 Q:なるほど、今日では救急蘇生の現場においては通りがかりの人による初期処置が可能になったというわけですね。そうはいっても慣れないと、簡単にはできませんよね。

 A:救急蘇生法については2005年に新しいガイドラインが発表され、一般人つまり非医療従事者の協力が得られやすい内容になりました。事故や病気で意識不明におちいった人を見たら、まず最初に心臓と呼吸が停止していないか確認します。肩たたきや呼びかけに反応がなく、呼吸がはっきりしていなければ、心停止を想定して直ちに心肺蘇生術を開始しなければなりません。

 Q:人工呼吸と心臓マッサージですね。

 A:もちろんすぐに119番通報して救急車を呼ぶことを忘れてはなりません。同時に近くにいる人にAEDを取りに行ってもらいます。呼吸が正常でなければ、AEDが到着するまで心臓マッサージと人工呼吸を行って生命を維持する必要があります。また、傷病者を移動させる際には、とくに頭や首の外傷、打撲の場合、頭部を固定し、頭頸部のさらなる損傷を生じないようにします。

 Q:気道の確保が最優先と聞きましたが。

 A:その通りです。意識のない人に対してあごを持ち上げるようにして頭部を後屈させて、頸部を進展させることで鼻や口からのどへの空気の通り道を確保してあげます。

 Q:心肺蘇生術の実際について教えてください。

 A:胸骨圧迫による心臓マッサージと人工呼吸は同時に行い、心臓マッサージ30回に対し人工呼吸は2回行うことが標準的方法です。胸骨は胸の真ん中にある縦長の骨です。圧迫は真上から行い、その位置はだいたい胸骨の下半分のところとおぼえてください。心臓マッサージは両手を重ねて1分間に100回ぐらいの回数で胸が4〜5センチ下がるくらい圧迫しないと効果がありません。人工呼吸は患者の頭を後ろにそらし、顎を上げた状態で鼻をつまみ、1〜2秒かけて口から息を吹きこみます。人工呼吸の仕方がわからないとか、直接口をつけるのが躊躇される場合には、人工呼吸をせずともとにかく胸骨圧迫のみに専念すればよいことになっています。

 Q:AEDはいつ使用するのですか。

 A:手元に届き次第患者に装着し施行の準備をします。そうすると、音声によって電気ショックの適応があるかどうか教えてくれます。AEDはあくまで心室細動などの危険な不整脈を治す手段ですから、たとえ意識のない患者でも電気ショックが不要である場合もあります。万一まちがって通電ボタンを押しても作動しないようになっています。何はともあれ、この間も心臓マッサージと人工呼吸は続けます。

 Q:AEDを使う場合の注意点を教えてください。

 A:電極パッドを右上前胸部と左下側胸部に貼って準備を整えます。通電しようとすると器械が自動的に電気ショックの適応があるかどうか判定してくれます。適応があると判定されたらすぐに電気ショックを1回行います。そうするとまた自動的に器械が心電図を解析して効果を教えてくれます。ところで、今まではそれによる効果判定の音声メッセージを待っていましたが、その間の時間がもったいないということで、最近では、その結果診断を待たずに心肺蘇生処置を再開し、およそ2分間行なったあとに心電図解析の結果を聞く、という方法が推奨されています。ただし、旧型のAEDではそのまま従来の音声指示に従います。

 Q:AEDは使う側には危険はないのですか。

 A:基本的に安全な器械ですが、通電ボタンを押したときに患者の体に触れていると軽い感電の恐れがあるので、救援者やまわりにいる人は手を触れないほうがいいでしょう。

 Q:子どもにも使用できますか。

 A:乳児には使用しませんが、1歳以上8歳未満の小児には施行することがあります。その場合、胸に貼る電極パッドは小児用を使います。ただし成人用しかないときには、やむをえない処置として成人用パッドで代用します。いずれにしても、2つの電極パッドが互いに接触したり重なったりしないように貼ります。

 Q:たまたまその場に居合わせて、心肺蘇生術やAEDを施す立場になったとして、残念ながら傷病者を救命できなかった場合、責任を問われることはないのですか。

 A:善意による救命行為であれば、たとえ不成功に終わっても民法上の規定で責任は問われません(金秀樹院長、医協東日本本部会長、あさひ病院内科、東京都足立区平野1−2−3、TEL 03・5242・5800)

[朝鮮新報 2007.4.18]