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〈朝鮮と日本の詩人-28-〉 真壁仁

 白頭の峰は雪にかがやき/けだかい白銀の頭を/三千里江山にめぐらしているだろうか/私はその峰があなたの顔に重なって見える/それはどんなに離れていても見える高さだ/あの山ふところが国土をうるおす水のみなもと

 白頭の麓の密林を根拠地に/飢え寒さに耐えながら/たたかいの焔を燃やした遊撃隊/ふぶきの冬も熱気の夏も/夜は暗く長かった/しかしついに普天堡の戦いは夜の闇を裂いた

 鴨緑江の波/大同江の水が/義軍の人影を映した/夜をひらく篝火の焔を照りかえした/そして大河の水はいま/生産の火花と大地の稔りを映している/白いチョゴリの微笑をうつしている

 あなたは遊撃の日と夜を神出鬼没したその足で/工場を訪れ村を歩かれる/あなたは 半生を苦役に耐えて生きた玉洞里の/貧しい寡婦にも土地と家をあたえ/文字と言葉をあたえた/李桂山の感奮から識字の運動が起こった

 あなたは山の村で牛飼いを教えた/祖国の山々に自生している葛の葉が/どんな牧草にましてすぐれた飼料であることを/またあなたは教えた/山野に繊維がみちていることを/それ紡いで織るてだてを

 目の前にある民族の糧と国土の宝/そして何よりも自立する自らの力/それを愛し育てた/創造のよろこびをあたえた/あなたの目はやさしくうるみ/あなたの口は勇気と決断に結ばれる

 白頭の峰は雪にかがやき/清冽な白銀の眉を/三千里江山にめぐらしている/私は見る/あれがあなたの顔だ/深いひだと広い裾野のひろがりによって高く/そしてきらめく精神の永遠の若さを

 「金日成首相還暦慶賀詩」という献辞の付された「ペクトゥの峰」の全文。

 真壁仁(1907〜84)は山形市に生れて小学校卒業後農業に励んだ。農民運動や生活綴方教育運動で検挙されたこともあり、日本古典にも造詣の深い詩人である。詩集に「街の百姓」「青猪の歌」などがある。(卞宰洙、文芸評論家)

[朝鮮新報 2007.4.18]