〈本の紹介〉 哲学への主体的アプローチ |
わかりやすいチュチェ思想入門書 今日まで多くの思想、哲学が生まれては消えた。現在、哲学が魅力のないものとなったのには、哲学が私たちとはかけ離れた抽象的な問題を難解な言葉で扱っている事情とも関連していると思われる。 私たちにとって、最大の関心事は人間の運命問題である。 哲学史を振り返ってみると大きく二つの流れがあることがわかる。一つは、世界観を与える学問としての哲学であり、ほかの一つは人生観を論じるそれである。 マルクス主義哲学を含め従来の哲学では、世界観の問題と、人生観の問題が事実上分離され論議されてきた。 チュチェ哲学は、人間の運命開拓の道を解明することを哲学の根本使命と定め、それを世界観的に解明することで哲学を生き返らせた。ここにチュチェ哲学がもつ歴史的意味がある。 このたび、チュチェ哲学をわかりやすく解説した日本語の書籍が出版された。それが本書「哲学への主体的アプローチ」である。 著者は朝鮮大学校の哲学講座長、チュチェ思想国際研究所の理事だ。 著者は、チュチェ哲学の骨格をなす基本原理を、T哲学とはなにか? U世界とはなにか? V社会歴史とはなにか? W人生とはなにか? の四つの部分に分け、40のテーマを設定してQ&A形式で概説している。 チュチェ哲学の内容を理解するには、そこで使われている概念の正確な知識が欠かせない。 例えば、社会的存在という概念は、マルクス主義哲学では社会生活の物質的条件と経済関係を意味する。そこには人間とともに生産手段、生産関係も含まれる。 しかし、チュチェ哲学では人間だけを意味する、といった具合に同じ用語を使っていてもそれが意味するものが異なる場合が少なくない。 著者は社会、民族、階級、主体等々、チュチェ哲学の基本概念を一つひとつ丁寧に整理してくれる。項目ごとに金日成主席と金正日総書記の命題を引用し、従来の哲学、とくにマルクス主義哲学の到達点を明白にし、それとの対比のなかで、チュチェ哲学の独創性と正当性を解説している。この方法は、マルクス主義哲学の歴史的貢献がなんで、その制約性、不足点がどこにあるのかを理解するうえでも大きな助けとなる。 一般的に、先行する哲学を継承するという場合、二つの意味がある。一つは、思想的内容は継承しないで理論的形式のみを継承する場合。これは階級的理念と使命が互いに異なる思想の間にありうる。 ほかの一つは、理論的形式ばかりでなく、思想的内容までも継承する場合。階級的理念と使命において共通性を持つマルクス主義哲学と、チュチェ哲学の関係がこれに該当する。 チュチェ哲学とマルクス主義哲学との間には独創性と継承性の両面があるが、その両面が対等な位置を占めるのではなく、独創性を基本にして継承性を見ることの大切さを指摘する著者の主張は、そのとおりである。 本書は、チュチェ哲学全般を簡潔な表現でまとめたチュチェ思想の入門書として、また巻末にチュチェ哲学の原典となる代表的な著作の目録と、朝鮮の教科書にもとづいたチュチェ哲学の体系を紹介することで、これからチュチェ哲学を学ぼうとする者にとって、格好の手引書となっている。(白峰社 韓東成、TEL 03・3983・2312)(金和孝、社協中央会長) [朝鮮新報 2007.5.19] |