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07年金剛山歌劇団アンサンブル公演「黎明」 国守る「雪竹花」伝説の舞踊化も

真の友好と平和を願い

 今年の金剛山歌劇団全国ツアー公演が17日、東京都北区の北とぴあを皮切りにスタートした(主催=東京公演実行委員会)。

 夜明けとともに、新しい時代の始まりを意味する「黎明」と銘打ったアンサンブル公演では、器楽演奏「黎明」、女性独唱「栄えある祖国」、チャンセナプ独奏「リョンガンキナリ」、男性独唱「王子の歌−歌劇『コンチとパクチ』から」、器楽と太鼓「響鼓楽」、民俗舞踊「パラの舞」、男性3人舞「男寺堂舞」、独舞「雪竹花」、3人舞「ハナ−ひとつ」、農楽舞「統一アリラン」(写真)などが披露された。

 昼夜2回にわたり行われた公演を、2100余人の同胞、学生、日本の市民、そして、足立デイサービスセンター朝日、介護施設アレック桜木の同胞高齢者たちが観覧した。

 公演を観たあしざわ一明・渋谷区議会議員(民主党)は、「とても洗練された公演だった。日本で生まれ育った若い芸術家たちが、自分のアイデンティティを大切にするのは重要なこと。歴史や伝統を大切にすると言うのは言葉では簡単だが、そこには多くの人の努力が込められている」と話した。

多数の新作

チャンセナプ独奏 「リョンガンキナリ」

男性重唱 「チャジュンパンア打令」

 オープニングの器楽演奏「黎明」は、本公演に向けて創作された。作曲家の高明秀さんは「音楽を通して真の友好と平和を築ければ」との願いを込めたと話す。

 民族楽器と洋楽器で奏でる音楽は、ゆったりと波打つ朝鮮東海の水面を、朝日がキラキラと照らしながら昇っていく様子を表現した。

 ベースとなるのは朝鮮民謡「アリラン」。曲は民族的なリズム(チャンダン)を生かしつつ現代風にアレンジした。また、新作の器楽と太鼓「響鼓楽」は、力強い太鼓の響きに「苦しい時こそ手に手を取り合い、力を合わせて困難を乗り越えよう」(高さん)との思いを込めた。

 2部では華麗な民族舞踊が多数舞台に上がった。

 民俗舞踊「パラの舞」で使われる「パラ」は民族楽器の一つで、僧侶が人々に悟りを開かせるのに使われたと言う。小ぶりなシンバルのようなパラの音で、人々の心の目を開き、真の友好関係を築こうとの願いが込められた作品である。

民族舞踊 「パラの舞」

男性3人舞 「男寺堂舞」

 今回初披露となる男性3人舞「男寺堂舞」では、男性舞踊家たちの四肢が宙に舞い、エネルギッシュな技が錯綜した。「寺堂」とは、その昔、村を練り歩きながら自分の持ち芸を披露した大道芸人のようなもの。作品は、過去のものを発掘し、現代風に改良された。

 「朝鮮舞踊基本動作」では、朝鮮が誇る不世出の舞姫・崔承喜(1911〜1969)が体系化した朝鮮舞踊の13の基本動作を、コッキ(歩み)、トルギ(回り)などかいつまんで解説した。舞踊家たちが毎日顔を洗うように繰り返す基本動作のすべてをマスターすれば、舞踊作品を自在に踊れるようになるという。

 子どもたちに人気の民俗舞踊「仮面舞」は、黄海道鳳山地域で有名な伝統芸能を再現したもの。軽快で躍動的な舞踊は、搾取階級を揶揄、風刺している。鳳山仮面舞は、現在、南でも保存されていると言う。

希望と力を

独舞 「雪竹花」(左)と3人舞 「ハナ−ひとつ−」

 2部の目玉とも言える独舞「雪竹花」(原作=小説「雪竹花」、林旺成作)は、朝鮮初の統一国家である高麗に伝わる、ある少女の物語を舞踊化したもの。

 父の仇を打つため男装し、武術の訓練に励む「雪竹花」は、16歳の実在した少女である。片手に長剣、もう一方の手には短剣を握り、傷ついた体を鞭打って国を守る。その勇姿を演じたのは、功勲俳優の宋栄淑さん。

 宋さんは、外敵から命がけで国を守った「雪竹花」を演じながら、「時代や状況は違うけれど、戦闘シーンでは、最近の総聯に対する迫害場面が重なってくる。私にとって国と同じように大切なものが、武力によって踏みつけられることへの怒りが、『雪竹花』の思いと重なる」と話した。

農楽舞 「統一アリラン」

 在日同胞にとってここ最近、重苦しい情勢が続いているだけに、洪嶺月名誉団長は、「世代交代が進む金剛山歌劇団の公演で、同胞たちに希望と力を与えられたら」と話す。

 金剛山歌劇団の団員は、出演者のほとんどが日本で生まれ育った3世、4世となった。

 彼、彼女らに民族の言葉や歌、舞踊を教え、民族楽器を奏でる喜びを教えたのは、日本各地にある朝鮮学校であり、その朝鮮学校を守り、支えてきたのは多くの同胞たちと心有る日本の市民たちである。

 「黎明」には、団結の力で新しい時代を切り開いていこうとする、団員たちの熱い想いが込められている。

 次回西東京公演は6月15日、府中の森芸術劇場どりーむホールで行われる。6時開場、6時半開演。問い合わせ=TEL 042・486・8450。(文=金潤順記者、写真=盧琴順記者)

[朝鮮新報 2007.521]