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〈本の紹介〉 季刊「前夜」11号 現代日本のレイシズム

日本の危機的状況にメス

 「前夜」11号の特集は「現代日本のレイシズム(人種主義)」である。

 第一部「マンガ嫌韓流と人種主義−国民主義の構造」(板垣竜太)、第二部・討論「嫌韓流の何が問題か」(歴史教育、メディア、消費文化、戦争とレイシズム=板垣竜太×山口正紀×鄭栄桓)を通じて、現代日本が抱える危機的状況への批判的分析を徹底的に加えている。

 朝鮮新報の電子版などへの露骨な差別語を用いた中傷などにも共通するように、日本のレイシズムの特徴は、「反植民地主義」へのすさまじい反発であろう。植民地支配や侵略戦争を肯定する日本政治の右旋回、軍国主義化の風潮と一体化しているのだ。

 本号で鄭栄桓氏が指摘するように、とりわけ、レイシズムの根の深さを見せるのは、「これまで朝鮮人のいいようにさせてきたが、これ以上黙っていられない」という反朝鮮感情の高まりである。そこに日本で生き延び続ける植民地主義とレイシズムの相関関係が浮かび上がってくる。

 さらに出色な企画だったのは、88年に世を去った梶村秀樹氏の一文「なぜ、朝鮮人が日本に住んでいるのか」(「指紋押捺拒否者への『脅迫状』を読む」=明石書店刊)が収録されていることだ。

 「ここは日本国日本人の国です」「在日朝鮮人の不良分子はみな帰国すればよい」−80年代、外国人登録証への指紋押捺拒否を貫いた人々の元に届いた数々の脅迫状。これらの一つひとつに真正面から対峙して論駁する梶村氏の気迫と誠実さが漲る一文である。生涯を通じて植民地主義、排外主義克服への希望と使命感を燃やし、貴重な仕事をなしとげた氏の思いを現代の状況に照らしてもう一度学ぼうとする試みは、新鮮である。(1400円+税、NPO法人「前夜」、TEL 03・5351・9260)(粉)

[朝鮮新報 2007.5.24]