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〈本の紹介〉 子どもの危機 教育のいま

日本の教育制度、民衆側での議論必要

 東京朝鮮第2初級学校の土地問題をめぐる「枝川裁判」では、民族教育の権利が初めて法廷で問われた。佐野通夫・四国学院大学教授は裁判で提出した意見書のなかで「民族教育を受ける権利が憲法・教育基本法上、保障されている」ことを明確にした。

 本書はそういった民族教育などさまざまなテーマから「改正時代」の教育体制について考察している。著者の佐野教授が講演や執筆の際の原稿などを再構成したもの。

 さまざまな問題点が指摘されながらも「改正」教育基本法は成立、施行された。さらに教育改革関連三法(学校教育法、地方教育行政法、社会教育法)の改正案が提出され、これらにより学校教育や地方教育行政に対する国の関与の道が大きく開かれたと言われる。教員や父母らに不安が広がる。これからの時代、日本の教育体制はどのようなものになるのか。

 「旧教育基本法の下で展開されてきた子どもたちに対する、民衆に対する攻撃を、直截的に表現したものが『改正』教育基本法であるといわなければなりません」(本文中から)

 本書は、教育基本法の改正など権力側の思惑で構築される日本の教育体制の問題点を鋭く批判し、日本の教育現場で起こる諸問題を挙げながらこのままの教育制度改革がさらに子どもたちや教員、民衆を苦しめかねないことを指摘する。

 そして、そうならないためにも教育を権力側ではなく民衆側の土俵で「議論」することが必要だとし、義務教育、民族教育、教育労働、差別、教科書などの側面から問題点と課題を提示する。「どんな社会を作っていくのか、その構成員となるためにどんな教育が必要とされているのか」―教育について考える視点を与えている。(佐野通夫著、社会評論社、2200円+税、TEL 03・3814・3861)(泰)

[朝鮮新報 2007.6.9]