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雨が去る音 −柳岸津−

 雨が去る音に目が覚めた
 訪れたことも気づかなかったのに
 引き潮の音のように
 近づいては遠ざかる 不協和の音程

 夜雨にも洗われなかった霞立つ闇へ、なごり惜しさと淋しさが靴の踵を引きずりながらついて行く音、いたずらに振り返るシルエットのような後ろ姿の、通り過ぎる夜雨の音、夜が白む前に帰らねばならないのか

 去る音が聞こえるので
 訪れたのはまちがいないようだ
 夜雨だけではない
 若さも愛も機会も
 訪れたことには気づかず
 去るときにようやく気づく
 いつの間にか去る音が大きくなる
 訪れたものはいずれ去っていく
 時節も夜雨も人びともー

 2004年5月

 「多寶塔を拾う」

 (2004年10月 創作と批評社)

 リュ・アンジン

 1941年慶尚北道・安東生まれ。ソウル大師範学部卒、米フロリダ州立大で教育心理学の博士号。女流詩人として詩集「月下」「春雨をポケットに」のほかにエッセイ集、小説など多数出版。2006年にソウル大を退職。 (選訳、康明淑)

[朝鮮新報 2007.6.18]