〈みんなの健康Q&A〉 パニック障害(下)−治療法 |
Q:前回、パニック障害の大筋について説明してもらいました。今回は、その治療について聞きたいと思います。 A:幸いパニック発作は薬物療法が効果的で、症状を比較的よくコントロールすることができます。最近では SSRI(パロキセチン・セルトラリン)が、依存性のないことと安全性が高いことからパニック障害の第一選択薬とされています。また、SSRIは、パニック障害に加えて、社会不安障害、月経前緊張症、広場恐怖、うつ病に対しても有効なことが示されています。 Q:即効性はあるのですか? A:SSRIは、発作に対して即効性は期待できません。例えて言うなら、漢方薬のように徐々に効果が現れ、発作を起こしにくくしてくれます。それまでの間は、即効性のあるベンゾジアゼピン系と呼ばれる抗不安薬を併用されることが多いのです。このベンゾジアゼピン系と呼ばれる抗不安薬は、頭痛に対する鎮痛剤のように即効性がありますが、大量、長期に服用すると依存性の問題もあるので、漫然と服用するのは好ましくありません。SSRI・抗不安薬それぞれの特性を理解し、使い分けて使用すると、ほとんどの患者さんは発作をコントロールすることができるようになり、普通に社会生活を送ることができています。 Q:治療の目標はまず、パニック発作をコントロールすることが重要ということですね。 A:発作のない状態を抗不安薬やSSRIを服用して、とにかく半年間くらいは続けることが必要です。たとえ薬を使っていたにせよ、「半年間、発作が起こらなかった」という事実(実績)により、発作に対する予期不安が減少するからです。なぜならば、パニック障害は根本的に「症状を自分でコントロールできない」ことに対して恐怖を感じるからなのです。 Q:ほかには何かありますか? A:また同時に、いくら苦しい発作が起きても「重大な事態にならない」ことを体験、理解し、発作時には薬を使う、ゆっくり呼吸をする、その場から離れる、水などをゆっくり飲む、やり過ごすつもりで「大丈夫」と自分に語りかけることなども有効で、いかにパニック発作の症状をコントロールできるかを自分自身で体験、学習することが大切です。日常生活の注意点としては、アルコール、カフェインを控えることも大切です。適度な運動は心身のリラックスをもたらしますが、過剰な運動をすると筋肉が乳酸を大量に排出し、過換気症候群を誘発する、とも考えられています。 Q:症状を放置した場合、どうなるのですか? A:過換気症候群・パニック障害を起こした人たちの多くが、症状を放置していると、うつ状態に移行していくと考えられています。確かに現在の薬物療法は根本的治療法とは言えませんが、精神療法と組み合わせることによってパニック障害の治療が行われます。 パニック障害になると、ほとんどの患者さんはある意味、「冷静」になり、どこに原因があるのかと自問自答をします。「いったい原因は何だろう?」「自分の性格に問題があるのではないか?」などと思い悩み、こだわってしまいがちです。しかし、このように考え込んでいても、答えや解決法はなかなか見つからないし、その間に症状が悪くなってしまうかもしれません。 Q:では、どのような努力が必要ですか? A:多くの患者さんは、治療を開始した頃は少しでも早く回復を望み、薬も医師の指示通りに服薬するのが普通です。しかし発作が出なくなり、症状が落ち着いてくると、「やはり薬には頼らず自分の力で治したい」「薬の依存症になったり、副作用が起きてくるのではないか?」と自己判断で服用を止めてしまう方もいます。しかし、急に中断すると反動で症状が再燃することがありますし、医師を信じずに自分勝手に服薬治療を中断すると、中にはパニック障害が再発、慢性化することもあり、具合がさらに悪くなって、再びクリニックに訪れる…という方も少なくありません。 思ったことはどうぞ遠慮せず、何でも主治医に話してください。自分でも納得のいくかたちで治療に取り組むことが大切です。パニック障害は必ず治るものですが、完全に発作がなくなり、服薬治療を終了するまでにはある程度時間がかかり、薬の減らし方にもテクニック(コツ)が必要です。「早く治そう」と、焦ったりせず、主治医と相談しながら「いつか時間が解決してくれるだろう」と、大らかな気持ちで、治療にあたりましょう。 (駒沢メンタルクリニック 李一奉院長、東京都世田谷区駒沢2−6−16、TEL 03・3414・8198、http://komazawa246.com/) [朝鮮新報 2007.6.20] |