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「在日コリアンオモニたちの子育てエッセイ集」を読んで 石川逸子(詩人)

あらゆる暴風に立ち向かって

 朝鮮民族である誇りをどうしても持たせたいために、日本の高校卒業後、娘を朝大に行かせた一人のオモニは、その娘がくじけないよう励ますために、広告紙の裏に手紙を書いて荷物とともに送り続けたという。

 山奥の飯場で70人近い労働者の食事の支度、ダンプの運転、畑作り、寝る閑もなく働き詰めのかたわら、朝日歌壇にも投稿し、車中には「世界」があって常に離さず読んでいた、オモニ。

 そのオモニへの感謝と尊敬を、はじめて手紙のかたちで文にした娘は、朝大に通うわが娘に自分がしてもらったと同じに、荷物とともに広告紙の裏に手紙を書いて送る。

 一人のオモニは、若く、子どもも幼い。彼女は、1時間以上かけて朝鮮学校に通う子どもを、ためらいなく居住区の学童クラブに入所させる。子どもと一緒に在日コリアンとして、地域社会の中で生きていきたい、と考えるためで、その願いは積極的な働きかけのなかでしっかりと実を結びつつある。

 なお、しつこく在りつづける日本国家の在日コリアンへの差別政策と巷の差別感情にあらがい、真剣に生をいとなむオモニたちの、ひたむきで、かつ開かれた、わが子への愛と、凛とした立ち姿。

 この書を読むものは、あらためて日本の負の歴史に向き合うとともに、深い勇気と、未来への前向きな示唆を与えられることでしょう。(TEL 03・3816・4344)

[朝鮮新報 2007.6.29]