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くらしの周辺−初公演の舞台裏

 5月17日、慌ただしさの中で金剛山歌劇団07年度の全国ツアーがはじまった。今年は東京・王子の北とぴあで幕を上げた。

 私は金剛山歌劇団で中堅の部類に入ると思うが、初公演は何回やっても緊張して地に足が着かないものだ。だからという訳ではないが、激辛の批評が多い東京での初公演はできれば避けたい、というのが私たちの本音だ。しかし、そんなことを言ってもしょうがない。それよりも、私たちの公演を観に来てくださる同胞や日本の人たちに喜んでもらえるように、一生懸命練習して舞台を勤めあげるのが私たちの仕事だから。

 4月半ばから公演までの1カ月間、劇団は文字通りてんやわんやだった。世間はゴールデンウィーク真っ只中、しかし、初公演を目前に控えた私たちに休みという文字はない。繰り返されるリハーサル、その都度演目ごとに手直しが加えられ、また一からやり直し。ほんとに芸術とは作り上げる過程が1番しんどい。

 ピリピリした雰囲気の中、意見の食い違いによる衝突などは日常茶飯事である。ましてやここは個性豊かな芸術家集団だ。ぶつかるのは必然である。

 しかし、より良い芸術を作り上げるためには、主観だけでは絶対にだめなのだ。客観性が命となる。そのためにぶつかることは良いことなのだ。また劇団員たちは、1年中一緒に過ごし、寝食を共にしている。お互いの性格は十分わかった上でのことなのだ。

 私たちは今日も意見をぶつけ合いながら次の公演地へと旅に出る。同胞たちの笑顔と舞台に送られるあの拍手と歓声に会うために。(蔡慶愛、金剛山歌劇団声楽家)

[朝鮮新報 2007.7.7]