〈こどもの本だな〉 夏休み、子どもと一緒に絵本の世界へ! |
民話、わらべうた、兄弟愛 統一列車に夢を乗せ 暑〜い夏。日中、降り注ぐ太陽の下で思いっきり遊んだ子どもたちは、夜は家族でだんらんのひとときをゆったりと過ごしたいはず。 そんなときは親子で絵本に親しんでみてはどうだろう? 朝鮮の昔ばなしやわらべ唄、小さな赤ちゃんを思うお兄ちゃん(お姉ちゃん)の気持ち、現実のものとなりつつある「統一列車」について、親子で語り合うのも楽しいかも。 ここで紹介した絵本は一般書店ほか、コリアブックセンターでも注文できる。 問い合わせ=コリアブックセンター(TEL 03・6820・0111、FAX 03・3813・7522、Eメール=order@krbook.net)。 泣く子も黙る恐怖のほしがき?!−「とらんとほしがき」
「とらとほしがき」は朝鮮半島で古くから語り継がれてきた昔ばなし。 山奥のそのまた奥に住んでいた大きなとらは、自分こそこの世の王であると信じていた。なぜなら、とらがひとたび「ガオー!」とほえれば、動物たちはブルブルふるえながら逃げて行ってしまったから。 ある日、食べ物を探して山のふもとまで下りてきたとらは、泣いている赤ん坊をあやす母親の声を聞いた。 「坊や、いい子ね。泣くのはおよし。坊やの泣き声を聞いておおかみが来るわよ」 それでも赤ん坊は泣き続ける。 「ううむ。赤ん坊はおおかみを怖がらないのだな。わしもおおかみなんか怖くないぞ」と、とら。 母親は、「くまが来るわよ」「とらが来るわよ」と言うが、赤ん坊は一向に泣きやまない。そればかりか、もっと大きな声で泣き続けた。 怖いもの知らずの赤ん坊にがっかりするとら。と、そのとき、母親が差し出したほしがきを見て、赤ん坊はぴたっと泣きやんだ。 泣く子も黙るほしがきに恐怖心を抱くとら。 ユーモラスな物語りに思わず笑いが出てしまう。民族情緒たっぷりの民画も美しい。 釜山−平壌へ、夢に見る統一列車−「韓国・北朝鮮の鉄道」
統一の希望を乗せ、東海線と西海線(京義線)の北南鉄道連結区間の列車試験運行が行われたのは5月17日のことだった。列車が北南を往来するのは、東海線が1950年以来57年ぶり、西海線は51年以来56年ぶり。 本書は、「鉄道でアジアが見える!」シリーズの第1弾。北の平壌地下鉄や南の高速列車KTXなどが写真入りで説明されている。 本には、朝鮮半島の歴史と朝鮮半島の鉄道の歴史も合わせて紹介されており、そこには、日本の支配下で朝鮮半島の鉄道建設は加速され、植民地支配の大きな武器になったとも記されている。 ほかにも、「ふたたびつながる鉄道」と題して、「鉄道連結の話し合い」「進む連結工事」「ロシアと北朝鮮」「韓国・北朝鮮とロシアをむすぶ東海線」「韓国からヨーロッパに直通」などの内容が盛り込まれている。 「南北の鉄道が連結し、北朝鮮の鉄道が整備されれば、ソウルや釜山からシベリア鉄道を通ってロシアやヨーロッパへ貨物を送ることができる。釜山からドイツのハンブルクまでは、船でスエズ運河を通るルートだと28日かかるが、シベリア鉄道経由だとそれが19日に」。朝鮮の鉄道を通して統一がグッと間近に感じられる。 懐かしい済州島のわらべうた−「しろいは うさぎ」
「シリドンドン コミドンドン シリドンドン コミドンドン」 なにやら不思議な呪文(?)からはじまるこの絵本は、済州島の人々に歌い継がれてきた「わらべ唄」を元につくられたものだ。 「コミ」はクモのことで、「シリドンドン」は、クモが糸にゆらりとぶら下がっている様子を表現した済州島の方言。 黒い石垣、かやぶき屋根、それをおおう縄の粗い網目。家の裏庭にはかめが見え、赤い服を着た女の子は、ふかしたじゃがいもを片手に、クモの巣を眺め、うさぎと肩を並べて歩き、じゃがいもを友だちと分け合って食べ、からすの背に乗って、青い空と海を眺める。 「くものすは しろい」→「しろいは うさぎ」→「うさぎは とぶよ」→「とぶのは からす」→「からすは くろい」→「くろいは いわやま」…と、テンポよく展開されるわらべ唄は、「光るはオヤジの×××」とはまた違った「オチ」で、見る者の心をなごませてくれる。 済州島には昔から、風と石と女が多いと言われてきた。最後のページに描かれた土饅頭の墓と、軒下の2足の履物は、島には女、子どもが多かったことを示している。 だって、おにいちゃんだもの。−「アフマドのあるすばん」
おかあさんは買い物。おばあちゃんはお昼寝。赤ちゃんのサーラーもベッドで眠っている。お留守番をしているアフマドは、おかあさんが帰ってくるまでに何かできることはないかなぁ、と思っていた。なにをしようかなあ。 眠っているおばあちゃんの絵をかこうと、アフマドはノートとえんぴつを取り出した。でも…人の目をどうやってかくのかは知っているけど、眠っている人の目をどうやってかけばいいのかわからない。アフマドはおばあちゃんの歯もかきたいと思ったけど、眠っているおばあちゃんは口もとじていてかけない。アフマドは、絵をかくのがいやになってきた。 アフマドは、おばあちゃんやサーラーを起こしてしまわないような、静かで楽しいことはないかと考えた。ふと、サーラーを見ると、小さなサーラーは起きていた。そうだ、サーラーにいいことをしてあげよう! お兄ちゃんになったばかりのアフマドの心の動きが、ていねいにユーモラスに描かれたイランの絵本。 こうやったらおかあさんが喜ぶだろうなあ、という子どもの気持ちは世界共通。小さな妹や弟をもつお兄ちゃん、お姉ちゃんにおすすめ。 [朝鮮新報 2007.7.27] |