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若きアーティストたち(50)

劇団員 鄭誠根さん

 子どもたちに大人気の民族戦隊「ピビンバレンジャー」で「コチュジャンレッド」を演じている。劇団「アランサムセ」の一員としても、数々の舞台で活躍してきた。

 襟元に光るセットンと金色のオッコルム、ヘルメットにそれぞれコチュ、コサリ、ムウ、コンナムル、シグムチのシンボルマークをつけた「ピビンバレンジャー」。主に学齢前の子どもたちを対象に、民族心やウリマルが自然と身につくように心がける「戦隊」だ。

 03年に行われた初めてのショーではスタッフの一員だった。「レンジャースーツは絶対に着たくない」と思っていたという。ところが「ピビンバレンジャー」は「アランサムセ」のオリジナル、ショーもその活動の一つだ。

 初のショーが大好評で、イベントへの出演依頼が相次ぐようになった。今では、青商会が主催する「コッポンオリクラブ」のビデオやコンサートで欠かせない存在となっている。

 歌のお兄さんとしても活躍する鄭さんは、子どもたちの前に立つ時は常に目線を子どもたちに合わせるという。彼らをいかに楽しませるか、何を求めているかを考える。コンサート後の握手会で、子どもたちがウリマルで「おもしろかったよ」「いっぱい応援したよ」などと声をかけてくれることがとてもうれしいと話す。

「ウリウリ! コッポンオリ! コンサート」(今年4月、東京)の「ピビンバレンジャーショー」で(中央が鄭さん)

 「アランサムセ」の年に1度の公演にもたびたび出演している。同劇団は、1988年6月に「朝鮮語で演劇をしたい」という素朴な思いから結成され、在日同胞の生き様をベースに過去、現在を見つめ未来への展望を数々の作品に込めてきた。

 昨年、東京・新宿にある劇場「タイニイアリス」が主催した「アリスフェスティバル2006」で19の劇団が出演する中、鄭さんが主人公を演じた「バンテージ」が見事「アリス賞」(最優秀作品賞)に輝いた。

 家での自主トレーニング、仕事帰りの練習。小劇団なので大道具や小道具、チラシなど全て団員たちが受け持つ。仕事との両立が大変な時もあるが「人に影響を与えられる演劇は本当にすばらしいと思う。現に声優を希望していた朝高生が『バンテージ』を見て、朝大の演劇部に入ると決意し今まさに1年目の新入部員としてがんばっている」

 幼い頃、舞台好きのアボジに連れられミュージカルやクラシックコンサートなどをよく観覧した。興味はあったが、舞台に立ちたいとまでは思わなかった。朝大2年の時、演劇部員の先輩に公演をビデオに撮るように頼まれた。ビデオを回し見つめる画面のその先に、いきいきと演じている部員たちの姿があった。「見ているだけではものたりない。絶対にやらなくちゃ」と思い、打ち上げの場で演劇部に入ることを宣言した。

 初めて役をもらい練習に参加した時は、緊張して歩くこともままならなかった。人前に立ちたいけど、恥ずかしさもあった。しかし、今では日本全国を回り多彩な役を演じ、その存在感を確固たるものにしつつある。

 芝居で重要なことは「自分のスタンス。何のために演じるのかを考えること」だという。

 舞台は「自分の存在を再確認する場」だと言う。

 「これからも劇団が同胞社会の中でしっかりと根を張って、日本だけでなく世界に向けてはばたいていければ」と抱負を語った。(姜裕香記者)

※1981年生まれ。栃木初中、東京中高(高級部)、朝鮮大学校外国語学部卒業。劇団「アランサムセ」の一員として、子どもたちに大人気の「ピビンバレンジャー」で「コチュジャンレッド」を演じる。大学時代から演劇を始め、対外公演や地方公演でも活躍。現在、朝鮮青年社出版営業部長。

[朝鮮新報 2007.8.6]