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映画・在日朝鮮人「慰安婦」宋神道のたたかい 25日 東京・中野で上映

 「オレは謝ってもらいてえ」

 在日朝鮮人の日本軍「慰安婦」被害者として唯一、日本政府の謝罪を求め裁判を行った女性がいる。宋神道さん(85、宮城県在住)だ。宋さんと裁判を支えた人々の10年間のたたかいを記録した映画「オレの心は負けてない」がこのたび完成した。

 宋さんは孤独の中で生きてきた沈黙の半世紀を破って「在日の慰安婦裁判を支える会」(以下支える会)とともに裁判を行った。1993年から2003年まで続いた。

 宋さんは16歳から中国で「慰安婦」を強制され、日本が敗戦を迎えた1945年、日本軍人に騙され日本に渡ってきた。

 劇中、宋さんは何度も何度もハンカチで涙をぬぐう。

 講演で訪れた女子校の数十人の高校生を前に、過去の自身の姿を重ね、奪われた青春時代を思い出した宋さんは口ごもる。そして、やっとの思いで「戦争はいけねえ」と何度も何度も繰り返すのだ。

 今も体に残る「金子(カネコ)」と刻まれた入れ墨は、当時の宋さんの源氏名。

 「オレは絶対嘘語ってないから。オレの言うことは、全部このまなこで見てきたことだから。火事場に行ってうちわであおぐようなことはオレはしたくねえから。ただ、本当のことだけ、語ってるんだよ」(映画チラシより)

 宋さんは裁判や講演、集会などを通じて自らの過去を吐き出し社会に訴えていくことで、凍りついた人間への不信感を回復していく。

 そんな宋さんの隣にいつも立っていたのが支える会のメンバーだった。

 支える会のメンバーの梁澄子さんは、「針の穴の隙もないほどの堅い鎧を身に着けている人」だと、出会った当初の宋さんの印象を振り返る。木野村照美さんも、宋さんの近くで接するほど「どうしても越えられない壁」を感じたという。しかし、宋さんも支える会のメンバーも誰一人諦めず、互いの関係を紡いでいった。

 03年3月、裁判は最高裁で上告が棄却され、敗訴が確定した。

 裁判は終わった。しかし、日本軍「慰安婦」問題は何ひとつ終わっていない。今もなお、日本政府は被害者に対する謝罪を行っていない。謝罪はおろか、「慰安婦」問題を否定する発言まで首相自らが公言している始末だ。

 7月30日には米下院本会議で日本政府に公式謝罪を求める日本軍「慰安婦」関連決議案が採択された。過去清算の責任を回避する日本に国際社会の厳しい非難の目が向けられている。

 安海龍監督は、映画は「宋神道さんの裁判過程を記憶するという意義を越えて、日本軍『慰安婦』問題を再び世に知らしめ、刻みつける契機」だと話す。

 過去ばかりでなく現在も、自らの尊厳が踏みにじられ続ける国で宋さんは暮らしている。

 日本の中学校の歴史教科書から「慰安婦」の記述が消え、歴史の真実がまた一つ葬り去られようとしている。(呉陽希記者)

◇      ◇

 8月25日、なかのZERO小ホール(東京都中野区)での上映を皮切りに、自主上映形式で日本各地で上映予定。今後の予定地は仙台(9月7日)、長野(10月13日)、松本(10月14日)、福岡(11月17日)、札幌(11月24日)。

 問い合わせ=「在日の慰安婦裁判を支える会」(TEL03・6324・5737)。

[朝鮮新報 2007.8.10]