〈本の紹介〉 東アジア冷戦とジェンダー |
冷戦下の女性像を追求 ジェンダー研究は米国をはじめとする冷戦下の西側諸地域から始まり、冷戦秩序の枠内での男女平等やそれを追求する女性運動に大きな関心を寄せて発展してきた。これまで日本におけるジェンダー研究は欧米の影響を強く受け、アジアのなかで日本女性の位相を見るよりも、欧米先進国なみの男女平等を求めて日本女性の地位や女性運動を考える観点が主流であったという。 日本女性史研究では第2次世界大戦下の女性の受難は問題にされたが、大戦後の冷戦が女性に強いた犠牲や、冷戦構造に抗う女性運動の存在にはほとんど関心が払われなかった。 近年、日本女性史研究の方法をめぐって、自民族中心主義的で一国的な従来の女性史からの脱却が模索されている。著者によれば、その表れとして「アジア女性史への希望」が語られるようになり、大日本帝国期が対象となる限りはアジア他民族の女性を巻き込んだ日本軍性奴隷制や日本女性の植民地支配、侵略戦争協力が女性史のテーマとして重視されるようになってきた。 また、韓国、台湾、沖縄など東アジア他地域では、冷戦の終焉を背景に、それまでタブーであった冷戦下の民衆の受難や冷戦が女性に与えたインパクトを問う新しい女性史研究が生まれている。 「東アジア冷戦とジェンダー」の研究に関しては、東アジア諸地域の最新の女性史研究の成果を踏まえて、旧植民地、内国植民地であり冷戦の下で新たな苦難を背負うことになった朝鮮半島、台湾、沖縄の視点から戦後の日本「本土」を捉えなおし、東アジア4地域の同時代的、地域関連の中で冷戦下の女性像を追求しようとした。読み応えのある一冊である。(藤目ゆき著、問い合わせ=大阪外国語大学、TEL 072・730・5205)(公) [朝鮮新報 2007.8.24] |