若きアーティストたち(51) |
現代美術家 南孝俊さん 埼玉県川口市にある「masuii R.D.R gallery」で8月20〜26日に開かれていた「Hyojun Circuit」を訪れた。ガラス張りの扉を開くと、青空が詰まった1500〜2000個のプラスチックコップを用いたスタレーション「sky vessel」と真っ白い壁一面に映し出された映像アート「vegetables」、そして南さんが笑顔で出迎えてくれた。 アートに携わり5年目。もともと手を動かすことが好きだった南さんは、中3の頃バレーボール部に所属しながらも学生美術展覧会で優秀賞を受賞。その作品がとても評判がよく、高校から美術部に入部。高1の2月に部で行った展示会を機に真剣に取り組むようになった。高2で「アルン・アート・ネットワーク」が主催する「アルン展」に最年少で出品。高3の学生美術展覧会では「金賞を3つとる。とれたら個展を開く」と意気込み、出品した3作品が見事特別金賞に輝き、高3の1月に初個展を開いた。 高級部の頃、学校で教わる「朝鮮」と家に帰るとテレビで流れる「朝鮮像」の違いに「アイデンティティーをくすぶられた」。大学で初めて日本人の輪に交じり、自分はマイノリティな存在だと肌で感じた。「在日3世」という二つの文化の中で葛藤し、自己と向き合う日々。疑問、違和感、矛盾。その思いをアートで表現し、提案する。
「『在日』と日本人の間に目には見えない壁を感じる。その壁をどうするのか? 相互にコミュニケーションをとりながら、『在日』のことをもっと考えてもらえる作品を作れれば」。そして映画やドキュメンタリーなどをはじめ、他者が「在日」を描くことが多い現状に複雑な思いも抱いている。「『在日』が一番自分たちのことをわかっているんだから、もっと自分たちでアピールしなければ」と語る。 「美術と世界の歴史には深い関連性がある。アーティストにとって世界の動きは作品を作る糧になる。たとえば戦争やテロが起こるとそれに反発する作品などが出てくる。民族史の一大転換となる祖国統一が実現したら、表現者として自分自身も変わるだろうし、作品も変わるはず」 「アートは人の思考の中に入り込める」。これまでも国境や民族を超え、大きな影響を与えた作品も無数に存在する。複雑な情勢の中、「在日3世」の視点での思いをストレートに表現することで社会から「共感」が生まれるか、「反感」が生まれるかはわからない。その分、表現するには「覚悟が必要で、厳しい緊張にもさらされる」。「人を変えたり、世直ししたりもできる」そんなところにアートの魅力を感じている。 生活の中での考えが常にアートにつながる。「今、取材を受けている姿を撮って次の作品に使おうかなとか。全てコンセプトに当てはめてしまう。リラックスできていないのかな」と笑う。 映像、立体、平面、ペイントなどマルチな才能を発揮する南さんは、「考え、手がけながら身震いするものを作って、世界を舞台に活動していきたい」と意欲的に語った。 今年の4月に上海で個展を開催、アートフェアにも出品。作品も数点売れた。9月には北京での展示会も予定している。現在、急成長を遂げている期待の若手アーティストだ。(姜裕香記者) ※1987年生まれ。尼崎初中、神戸朝高卒業、東京造形大学中退、現在東京や上海で活動中。16歳から精力的に活動を始め、06年1月に初個展「anti Hyo-Jun」、06年11月に個展「post Hyo-Jun」、07年4月に上海で個展「器−Vessel」とアートフェア「ART SHANGHAI 2007」に出展。その他グループ展やキュレーターとしても活躍。ウェブサイト(http://photocabi.net/namhyojun)。 [朝鮮新報 2007.9.3] |