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〈みんなの健康Q&A〉 精神科と心療内科(上)−概要

 Q:これまで本欄で、精神科や心療内科の病気などについて、いろいろ説明されてきましたが、「精神科、心療内科」について、詳しく教えてください。

 A:まずはじめに、精神科と心療内科の違いを簡単に言いますと、「精神科は精神の病(うつ病、統合失調症等)を主に治療するところで、心療内科は心身のストレスから来る身体の失調(高血圧、糖尿病等)を主に治療するところ」なのです。ですが実際の臨床現場では、「精神科、心療内科」を厳密に使い分けているところはほとんどありません。実際では患者さんの受診のしやすさなどを考え、「精神科」を前面に出さず、「心療内科」を看板にしているクリニックも多いのです。

 Q:社会の偏見がそうさせているのですね。

 A:みなさんは「精神科の患者さん」と聞いて、どんな印象をお持ちになるでしょうか? 多くの人は「なにか怖い人」「よく解らない」「同僚にうつ病の患者がいる」とか、中には「この病気だけにはなりたくない」という人もいるかもしれません。しかしここ数年、精神科を受診する患者さんは確実に増えているのです。そしてこの10年間で、心の問題(メンタルヘルス)を扱う精神科、心療内科を標榜するクリニックの数は倍近くに増えています(私のクリニックでも「心療内科」を標榜しています)。

 Q:それだけ現代社会では、メンタルヘルスの需要が高まり、供給も増えているということですね。

 A:例えば、「パニック障害」は100人に1〜2人、 「うつ病」に至っては100人に3人くらいはいると考えられています。このことからもわかるように、心の病は決して特別なものではなく、いつ誰がなっても不思議ではないのです。精神科を受診される患者さんの病気には、うつ病から統合失調症、不眠症、過食症等々があり、時には嫁姑や夫婦関係の相談も受けることすらあります。しかし、依然として日本では「精神科を受診する」ということを、特別なことと思っている方も多いのです。まだまだ「考え過ぎ」だとか、「性格のせい」だとか、「このくらいでかかったら医者に笑われるのではないか?」などと、受診を躊躇される方が多いようです。

 Q:受診が遅れると病気が進むこともありますよね?

 A:薬の服用にしても「睡眠薬」ならまだしも「精神安定剤」とか「抗うつ剤」などを飲むことに、少なからずの不安や抵抗を感じられるのでしょうか。眠れなかったり、イライラしたり、憂うつな気分は、大なり小なり長い人生、誰でも経験しているはずです。ただ、注意しなければいけないのは、今言った症状がずっと強く、そして長く続くのが病の始まりなのです。もし、そのような症状が続くようならば、「気のせい」と言って放置し、いつまでも苦しむのではなく、薬を使ったり、カウンセリングを受けたりすることで、症状を早く改善させることが大切なのです。

 Q:心の病について最近では新聞、雑誌、テレビなどで話題になることが多く、自ら病気ではないか? と心配して、受診される方も増えてきたのではないですか?

 A:そうです。もし、あなたが「受診しようか」と悩んでいるなら、保険証を持って気軽に受診してください。特別に準備するものは何もありません。「病気のことが気になるから病院へ行く」。このくらいの軽い気持ちでよいのです。

 Q:最近ではインターネットに、うつ病の検査なども載っていますよね。

 A:患者さんの中には、「何気なく検査に答えたら、うつ病と診断された」と、慌てて受診される人も珍しくありません。最近ではこのような心の状態を自分で判定できるテストがネットや新聞、書籍上にいろいろと目に付きます。しかし、このようなテストは決して「うつ病かどうか」の判定をするものではありません。こころが健康な方でも直前にショックな出来事があれば、「うつ」の傾向が強く出ることは、よくあることなのです。テストの結果はあくまでも「1つの指標」であって、総合的に診察して、うつ病かどうかを判断しなければならないのです。

 ですから、このようなテストは単に「病院に行って診察を受ける(専門家の意見を聞く)かどうか」という目安として使えば良いのです。

 Q:でも、いざとなるとなかなか勇気がいるのかもしれませんね。

 A:初めて精神科を受診される方は、本人、家族とも恥ずかしがらず、不安を持たずに何でも医師に相談、質問をしてみてください。精神科医に限らず、医師は患者さんから打ち明けられた秘密を、他人に知らせてはならないという法律があるので、安心して相談してください。一人で長い間悩んでいた人が、精神科を受診して治療が進み、症状が軽快してくると「こんなことならもっと早く相談に来れば良かった」と思うケースも多いのです。

 Q:中には本人がどうしても受診したがらないケースもあるようですが。

 A:もし、本人が受診したがらない場合は、メンタルクリニックや最寄りの精神保健福祉センターへ家族が相談しに行くのも良いでしょう。そして、家族がどのように本人に対応すれば良いのか、アドバイスを受けた方がいいでしょう。

 精神科は医師個人の力量だけではなく、「患者さんと医師の信頼関係」も重要な科なので、ある程度精神科医師と患者さんとの間に相性があるのも事実です。例えばみなさんが外科などで手術を受けるのならば、手術の腕が一流であれば、医者の性格に多少、難があったとしてもほとんどの方は気になどしないでしょう。しかし、心の問題を取り扱う精神科ではそうはいきません。相性が合わなければ、自分の悩みのすべてを相手に打ち明ける気にもなれず、治療がうまくはかどらないこともあるので、精神科はその担当医との相性も重要となるのです。ですから、受診に当たっては、インターネットのホームページであらかじめクリニックの様子を調べてみたり、普段よく診てもらっている医師の紹介を受けてみるのも大切なことなのです。

(駒沢メンタルクリニック 李一奉院長、東京都世田谷区駒沢2−6−16、TEL 03・3414・8198、http://komazawa246.com/)

[朝鮮新報 2007.9.6]