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〈みんなの健康Q&A〉 精神科と心療内科(下)−診察の手順

 Q:精神科、心療内科での診察の手順などについて説明してください。

 A:まず、自分が精神科、心療内科にかかる際に、どうしても大学病院や総合病院のような大きな病院の精神科に行かなければいけない、と考えてしまう方もいらっしゃるでしょう。しかし、必ずしも大きな病院の精神科に行く必要はなく、むしろ通いやすい心療内科やメンタルクリニックといった小さな病院・クリニックの方が最適な場合も多いのです。精神科・心療内科の医療は医師個人の技量や、患者さんと医師の信頼関係が大切な科です。高価な検査機器などは必ずしも必要でないので、施設の規模や名前に目を奪われるのではなく、むしろ「信頼できる医師と出会えるかどうか」が大事なポイントとなるでしょう。最近は、駅前などに精神科クリニックも増えてきています。規模の小さいクリニックの利点は、日常生活のペースを保ちながら治療を受けられることです。

 Q:一般的に、「大学病院にかかる」というイメージを持ちがちですが。

 A:精神科は、ゆっくりと大らかに進歩している科であって、他科のように、急激で斬新な医療が日々開発されている、といったイメージではありません。ほかの医師からの紹介がある場合は別ですが、ばく然と大学病院のブランドイメージだけを頼りにするのは、得策とは言えないでしょう。

 Q:それでも、どうしても「大きな病院できちんと検査を受けたい」と思う人は、どうすればいいのですか?

 A:近くのメンタルクリニックや掛かり付けの内科の先生に紹介状を書いてもらうことをお勧めします。大学病院や大規模な国立、県立病院などは「特定機能病院」 と言われ、このような病院に紹介状を持たずに受診した場合、初診料とは別に「特定療養費」という健康保険が適応されない自己負担金が3000〜4000円ほどかかる場合があります。それに、あなたの病気がそのような病院にかかる必要があるかどうかの判断も含め、まず受診するなら市中の駅前などにある精神科、心療内科の看板が出ている医療機関にかかることをお勧めします。心の病のほとんどは、実は精神科の病気なのです。しかし依然、精神科に対するマイナスのイメージが強いため、患者さんにかかりやすくするために心療内科、神経科の看板を出しているところも多いのが現状です。

 Q:診察時間はどのくらいかかりますか?

 A:精神科での初めの診察では、ほかの科と違って、30〜40分ほどかけて、じっくりと症状の経過をお聞きします。精神科では患者さんの話の中から、病気の症状や原因を見つけ診断、治療をします。いつ頃から病気の症状が出てきたのか、病気の原因や引き金となった精神的な負担や、ショックな出来事はないのかなど、病気の治療のために必要な情報を患者さんにお尋ねし、情報として整理します。このため、少し立ち入ったことをお聞きすることがあるかもしれません。あらかじめ質問の内容をプリントにした問診表を渡され、それに記入をしてから始まる場合もあります。患者さんの情報をもとに診察をして、その症状に応じて必要があれば薬を処方します。基本的には内科などの診療と変わりませんが、症状を医師が理解するための話し合いや、薬についての説明、今後の治療の計画などについてお話するので、はじめのうちは多少診察が長くかかることが多いのです。

 Q:カウンセリングも含まれているのですか?

 A:この「治療のための話し合い」は、「その人の問題をカウンセリングによって治療する」という精神分析的な治療とは異なります。治療の方針が決まり、薬物療法による症状が安定すれば、多くの場合10分程度で診察は終わります。「はじめの頃はていねいに話を聞いてくれたのに、この頃は3分診療だ」と不満を感じる人も中にはいるかもしれませんが、実は、これが健康保険の範囲内でおこなわれる精神科治療なのです。よく「カウンセリングはできませんか?」と質問を受けます。もっと話を聞いてもらいたいという場合は、一度精神科医にその気持ちを伝えてみてください。もっと根本的な話し合いによる治療を望む場合には、カウンセラー(臨床心理士)の協力が必要となる場合があります。精神科医が、病気を治療するために医療を提供するのに対して、カウンセラーは、患者さんの人格的成長を助けたり、人間関係を円滑にする為の環境を整えることをお手伝いします。

 Q:カウンセリングは医療行為ではないのですか?

 A:カウンセラーの行うカウンセリングは医療行為と認められていないため、今のところ健康保険は適用されていません。カウンセラーは担当医が心理テストやカウンセリングが必要だと判断した場合に、心理学の専門家として治療に参加し、医師やソーシャルワーカーと協力しながら医療を行います。どんな治療が適切なのかは、精神科医師と話し合い、総合的に判断する必要がありますが、もしもカウンセリングを求めている場合には、その精神科医療機関にカウンセラーがいることや、治療を受けるためのシステムをあらかじめ、知っておくことが必要です。

 Q:いろいろと勉強になりました。

 A:医療というのは誰もが幸せに生活をしていくための「道具」にすぎません。必要な時に、必要な道具を使えばいいのです。人間の心も身体も自分自身の力だけでは、コントロールできないこともあるのです。最近眠れない、気分が落ち込んでいる、こういう症状が気になるなら、ぜひ家の近くや、通勤途中の通いやすい病院・クリニックへ気軽に行ってみてください。近頃では地方都市でもターミナル駅ならば、駅前のメンタルクリニックを探すのは、さほど難しくありません。みなさんも精神科をもっと積極的に利用し、一日も早く適切な治療を受け、以前のよう様に健康的な生活を取り戻してください。

(駒沢メンタルクリニック 李一奉院長、東京都世田谷区駒沢2−6−16、TEL 03・3414・8198、http://komazawa246.com/)

[朝鮮新報 2007.9.12]