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神戸市でアーティスト・権基英さんの個展「material」

失われていくものに愛惜を

自宅近所の川原で拾った空き缶と貯金箱を用いた作品

 アート分野で活動する兵庫県明石市在住の権基英さん(25)の個展「material」が9月10〜30日、神戸市のアートカフェ「チムチムチェリー」で開かれた。11月に閉店が決まっている同店での最後の催しだった。

 「素材そのもの、古いものが好き」という権さんの言葉通り、展示場にはすべてが廃材で作られた作品が並んでいた。材料は空缶、空びん、子どもの靴底、電球、マヨネーズのふたなど家の近くの川原や海辺で拾ってきたもの…。材料費はゼロだ。シンプルな中にも、何か置き忘れてきたもの、忘れ欠けていたものを思い出させてくれるような懐かしく温かみのある空間。

 「物質にあふれる現代社会では、物が簡単に捨てられてしまう。捨てられた後はどうなるのか。高層ビルがそびえ立つ中に廃墟と化した建物が何かを訴えかけているように思う。時代に取り残されたものにも美しさや趣がある」と語る。

自作と共に

 昔から絵が好きだったという権さんは、大学で美術を専門的に学びたいという思いから高級部3年で美術部に所属。2年間の勉強ののち、宝塚造形芸術大学に入学。若い世代の在日同胞のアーティストらによるグループ「tokki」の活動をはじめグループ展や個展などに積極的に参加するかたわら、現在は宝塚歌劇の舞台背景を制作する仕事に従事する。「社会人になったら忙しくて制作もあまりできないと思っていたが、やり続けないと落ち着かない」という。

 権さんにとってアートは生活のリズムの一つになっている。「美術は作品を通して、見る側と作る側とのコミュニケーションをはかれる。その人がどのように考え、生きているのかが伝わってくるから、作家と初対面でも親しくなれる」。そんな関係がおもしろいという。

 「今はいろんなことにチャレンジし、模索して、美術(表現)の可能性を探っていきたい」と意気込んでいる。12月21〜26日にかけて神戸市の三宮で個展「material&spiritual」を予定している。(姜裕香記者)

[朝鮮新報 2007.10.1]