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〈本の紹介〉 遺骨の戦後−朝鮮人強制動員と日本−

日本の植民地支配と戦争裁判を問う

 表紙を飾る一枚の写真。1942年9月13日に撮影されたこのセピア色の記念写真には9人の青年の姿が写っている。

 写真は強制動員先の日本から朝鮮の家族にあてた手紙に同封されていたものである。差出人は崔天鎬さん(写真左端の人物)。1945年の敗戦直後、「秋夕(旧暦の8月15日)までには帰国する」という手紙を最後に消息が途絶えた。

 日本はアジア太平洋戦争時の労働力不足を補うために、植民地下にあった朝鮮から多くの朝鮮人を動員した。酷悪な労働の強制によって多くの人が命を失い、帰国の途上で海難にあい亡くなった。家族の元に遺骨が戻ったケースもあるが、崔さんのように消息すらわからない場合も少なくない。日本各地の寺や山野には朝鮮人強制動員の被害者とみられる遺骨が今なお放置されたままだ。

 日本の植民地支配は戦後60年もの間、裁かれずにきた。戦争裁判の視点から見ると、捕虜の強制労働、虐待は戦争犯罪である。しかし、朝鮮人の強制労働、虐待は戦争犯罪として裁かれなかった。

 本書は、「はじめに−なぜ、今『遺骨』なのか」「強制動員犠牲者の遺族の声」(福留範昭)、「遺骨返還は国境を越えて」(上杉聰)、「日本人の遺骨も放置されている」(内海愛子)、「おわりに−未清算の戦争責任の証人」「『強制連行期の動員朝鮮人死亡者数』解説」で構成される。

 物言わぬ遺骨は、日本のアジアに対する戦後処理や、戦争責任、植民地支配の責任を問いかけている。(480円+税、岩波ブックレット、TEL 03・5210・4111)(潤)

[朝鮮新報 2007.10.1]