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「神戸ビエンナーレ07」 隣人への理解深め

アーティストユニット ソン・ジュンナン&ユン・チョンス

6日の開幕に向け制作活動に励む(「KOBE People」)

 兵庫県神戸市のメリケンパークで10月6日〜11月25日まで「神戸ビエンナーレ2007」(主催=神戸ビエンナーレ組織委員会・神戸市)が開かれている。テーマは「出合い〜人・まち・芸術」。長さ12メートルの巨大輸送用コンテナが100余個立ち並ぶメイン展示会場で開催中の「アート・イン・コンテナ展」。同展には世代、国を問わずさまざまな顔ぶれが応募した。ここに在日同胞アーティスト・ユニット「ソン・ジュンナン&ユン・チョンス」の作品が入賞、展示されている。

 作品のタイトルは「KOBE People」(写真のインスタレーション)。コンテナ内の大きな空間一面に7000余枚の人の顔写真が所狭ましと敷き詰められている。A4版の写真、数千枚が一つになるとインパクトはすごい。そこに足を一歩踏み入れると、国籍、年齢、性、ビジュアルが違う数千人と一瞬にして出会う。

 ハイカラ文化などと呼ばれ異国情緒あふれる国際都市・神戸。近年、在日外国人が増加しつつあるが、まだまだマイノリティな存在だ。この作品を通し、マイノリティとマジョリティを逆転させるとどうなるか。「同世代の日本人の自国文化への理解の意識が希薄」なことに寂しさを感じる彼らは、「神戸のもう一つの顔、隣人である在日外国人との出会いを通して、自分自身ひいては国際都市・神戸の魅力を感じてもらえれば」と願い、制作に取り組んだ。

 2人の間で在日外国人をテーマにすることは、すんなりと決まった。彼らの共通の思いは作品を通して「気づかせること」。(姜裕香記者)

「在日らしいこと」を探して ユン・チョンス(23)

ユン・チョンスさん(右)とソン・ジュンナンさん

 今回の作品では「在日朝鮮人だけじゃなく、ニュートラルもニューカマーも含め大きな範囲で表現したかった」。

 美術を本格的に始めたのは、大学から。卒業後は、大学の研究員に進み制作活動に励んだ。現在は、岡山朝鮮初中級学校の非常勤講師として勤めながら、フリーで制作活動をしている。

 ユンさんをはじめ若い世代は、「在日」を表現した作品が多い。「表現をする時には、まず自分の存在を見つめる。だから、必然的に『在日』の存在について考えるようになる」。

 高級部から民族教育を受けた。それまでは、当たり前のように日本学校で日本人の輪に混じり育ってきた。その頃の生活に物足りなさを感じていた。地域の支部の勧めで、朝鮮学校という今までとは違う世界に飛び込んだ。そこには、自分と同じ「在日」の友だちがいた。ウリマルを学び、同じ悩みを分かち合う仲間の存在。居心地がよかったし、「在日」の立場、思いに気づくことができた。

 今は週に2回、新幹線で神戸から岡山まで通いながら、7つの学年を教える。何かと大変なことが多いが、「しんどいのが人生」と意に介さない。「落ち込んだりもやもやしたりしていても、素直で無垢な学生たちと交わると中和される」と講師の楽しさを感じている。

 作品を通して提案する自分の思いが、他の人にはどう受け入れられるかは分からない。「自分の作品が、世の中にどれくらい価値があるものなのか」と日々、模索する。

 社会に出て、いろんな人と接してきた。「ほとんどの人が疲れきっていて、幸福感を感じられない。だから、生活の中で、少しだけでも幸せを感じられたら」とアートに取り組む。

 朝鮮や南朝鮮、日本ではなく、「『在日らしいこと』を見つけて、表現していきたい」と今後を見つめる。

※1984年生まれ。別府小中学校、神戸朝高、朝鮮大学校教育学部美術科、同大学研究員卒業。現在、岡山初中級の非常勤講師。04年「AREUM京都総合展」「東京マーブルPOLKA」、06年「地力。ARTイマジネーション in KOBE磯上2006」「朝鮮大学校卒業制作展 in 大阪」などのグループ展で活躍。

日々、悩みながら ソン・ジュンナン(21)

 「普段、日の目を浴びない人たちをクローズアップしよう」「在日外国人が感じる矛盾や葛藤を日本人に体験してもらえれば」「人と同時に風景を通じて神戸の町を旅するような感覚になれたら」−との思いから、今回の作品を手がけた。

 幼い頃から絵を描くのが好きだった。中3の頃には美術をものにしていこうと心に決める。美術部に所属したのは高級部。現在は、大阪芸術大学で芸術学部美術学科構想コースを専攻している。

 作品は、社会的なテーマが多い。客観性を常に根本に据えて構想し、制作する。「日本は、国も人も他者への関心がないと思う。世界からどのように思われているのか、という自問もない」。日本人だけではなく、自分を含め「在日」が、日系ブラジル人や中国の朝鮮民族について、よく知っているかといえば、そうでもない。だから、もっといろんなことに目を向け知ろうと心がけている。

 「表現者にとって人生の経験値はとても大事」

 日本で生まれ育ち、民族教育を受け、日本語で思考し会話して、日本人と同じような生活様式・感覚を持つ。いつも朝鮮(北南)、日本、「在日」−3、4つの観点から物事を見ている。自己意識が常にある。そして、葛藤する。「自分は何者なのか。不安定で、迷ったり苦しかったりもする」が、それが逆に強味になることもある。

 美術作品は、コミュニケーション力を持つ。抽象的な自分の考えを目の前に具現化させることができるか。作品のあり方はこれでいいのか。作品を見る人が、メッセージをどう受け取るのか。常に悩む。それが、難しくもあり、楽しくもある。

 今回、行政が催す大きなイベントに、自らの作品が通ったことは、今後の活動の糧になった。「この頃、美術の奥深さをいっそう感じるようになった。これからも一歩ずつ着実に歩んでいきたい」と意欲を燃やす。

※1986年生まれ。西神戸初級、神戸初中級、神戸高級、大阪芸術大学芸術学部美術学科構想コース在籍。05年「第9回若き画家達からのメッセージ2005展」、06年「Energy Release」、07年「そんな顔しないでよ」などのグループ展、05年「西神戸朝鮮初級学校60周年愛校祭−100年後のウリハッキョ未来予想図」のワークショップでも活躍。08年にはタイでグループ展「NOWAR 反戦国際交流展」を予定。

[朝鮮新報 2007.10.9]