「あおがえる」 南朝鮮で翻訳出版 |
詩情たっぷり、あふれる民族情緒 옛날
옛날 아주 먼 옛날 朝鮮では昔から広く親しまれている「あおがえる」。北南はじめ在日同胞の中でも、おそらく知らない人がいないほど有名なおはなしだろう。 日本生まれの「あおがえる」
著者の李錦玉さんは、在日2世の詩人である。絵本は、1991年朝鮮青年社から出版され、今年、南朝鮮の図書出版ポリから朝鮮語版が出された。 李さんは朝鮮語版発行に次のような一文を添えている。 「遠い昔、オモニ(母親)に『あおがえる』のおはなしを聞きました。見知らぬ土地、日本で寂しく悲しいとき、オモニは私をひざの上に座らせ、むかしばなしを聞かせてくれました。…絵本『あおがえる』は1991年に初出版され、日本にいる朝鮮の子どもたちと友だちになりました。それが16年ぶりに故郷を訪ねることになりました。あおがえるは『けっけっけろけろ アンニョンハセヨ!』とあいさつするでしょう。故郷に住む子どもたちがあおがえるを温かくむかえてくれるかしら。そして、楽しくお話ししてくれるかしら。私は、みなさんが海を越えて日本で一生懸命生きてきたあおがえるを大切にし、仲良くしてくれると信じています」 作品の特徴
物語は、母親の言うことを聞かずあまのじゃくなことばかりするあおがえるへの心配が募り、母親はとうとう治る見込みのない病にかかってしまう。母の最後の願いはつつじの花が空まで届く暖かい山のふもとで眠ること。 しかし、いつも母親の言いつけとは反対のことばかりするあおがえるを思い、母親は「母さんが死んだら川岸に埋めておくれ」と頼む。母の最後の願いを聞き入れたあおがえるは言いつけを守るが、雨が降り、川の水があふれそうになると母親が流されると思い、おろおろ泣いた。 この絵本の特徴の一つは詩的なリズムにある。李さんは05年、詩集「いちど消えたものは」で日本児童文学の最高峰である第35回「赤い鳥文学賞」に輝いた。作品はあおがえるが暮らす村の情景を詩的情緒たっぷりに描いている。 청개구리네
마을은 강뚝아래
二つめは、あおがえるに対する優しく大らかな視線。あまのじゃくなあおがえるを、わんぱくでいたずら好きの元気な子どもとして捉え、母親のような温かいまなざしで見つめている。 三つめは、日本語版同様の縦書きであること。朝鮮語の絵本としては珍しい作り方である。 そして、文章とともにユーモラスで愛らしい絵もしっくりはまっている。 登場人物(かえる?)がすべてチマ・チョゴリやパヂ・チョゴリを身にまとい、母がえるが洗濯物を頭に乗せ、病で倒れた母親のそばに置かれた膳の上にはスッカラ(匙)が置かれているところなど、日本で生まれ育った幼い読者を配慮したものだろうか。わらぶき屋根の民家や枕の刺繍、家の中の調度品など細部にいたるまで民族情緒たっぷりである。 子どもをつなぐ 絵を描いた朴民宜さん(在日2世)は、李さんとともに「さんねん峠」「へらない稲たば」(岩崎書店)、「りんごのおくりもの」(朝鮮青年社)ほか日本で出版された南朝鮮の児童文学「モンシル姉さん」の挿し絵も担当した。 朴さんは南朝鮮での出版に次のような一文を添えている。 「今となっては日本の子どもたちも『あおがえる』に親しむようになりました。この絵本が故郷の子どもたちにも紹介されるのがとてもうれしく、胸がいっぱいです。『あおがえる』を通じて、南の子どもと在日コリアンの子ども、日本の子どもがもっと近づくことを、お互い仲良く幸せであることを、母親であり、絵描きとして願ってやみません」 巻末には成長したあおがえるの結婚式の様子がほほえましく描かれており、母親をなくして苦労したであろうあおがえるが、立派に成長したことを暗示している。 朝鮮語版、日本語版ともにコリアブックセンターで取り寄せ可能。 問い合わせ=TEL 03・6820・0111、FAX 03・3813・7522、Eメール=info@krbook.net。(金潤順記者) [朝鮮新報 2007.10.19] |