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合唱コンサート「隣人と友に〜隣人と共に〜」 「心でつながることが大切」

朝鮮人被爆者、強制労働、植民地支配を歌に

朝鮮人強制連行労働者の悲劇を曲に込めた「海の墓標」(池辺晋一郎作曲)

 東京・青砥のかつしかシンフォニーヒルズで10月27日、アジアの平和と共生を願う合唱コンサート「隣人と友に〜隣人と共に〜」が開かれた。

 コンサートでは作曲家の林光、池辺晋一郎、金学権さんらがタクトを振った。

 朝・日・南の作曲家たちが音楽を通して過去の歴史と向き合い、共に進むべき道を探るために開かれたコンサートでは、朝鮮民謡「海の歌」(尹忠男作曲)、高麗歌曲「青山別曲」(朴範薫作曲)が朝鮮語で披露された。

 「海の歌」は朝鮮半島中部・江原道の海辺に古くから伝わる民謡で、即興的なのりの良さで北南の民衆に広く親しまれてきた舟歌である。作曲者の尹忠男さんは神奈川県で生まれ育ち、学生時代に帰国、朝鮮で才能を開花させた。本来の男声合唱曲を、コンサートにちなんで金学権さんが女声合唱のために編曲した。

 「青山別曲」は高麗末期(13〜14世紀)につくられた叙情歌曲のひとつで、即興句の「ヤルリ ヤルリ ヤルランソン―」は民謡「アリラン」の語源ではないかとの説もある。今回の曲は、民族音楽の権威である朴範薫・韓国国立中央大学総長が当時の歌詞に親しみやすい曲をつけた。

 コンサートでは、在日と日本の作曲家が過去の歴史と真しに向き合い、「共に生きる」未来への希望を込めた自作曲のタクトを振った。

 金学権作曲「スニのための鎮魂歌」(詩・許南麒)は、植民地時代、父親を捜しに朝鮮から日本へやって来て、広島で原爆の犠牲となった12歳の少女を描いたもの。25年前、広島で朝鮮人被爆者協会の会長に会い、衝撃的な事実を知り作曲した。1章と4章に「あやし歌」を、3章には朝鮮の童謡「半月」を引用した。

 池辺晋一郎作曲「海の墓標」(詩・芝憲子)は朝鮮人強制労働者の悲劇と、告発、鎮魂を込めて、山口県長生炭鉱水没事故を扱った。池辺さんは十数年来、20世紀を振り返りつつ、反戦、反核、環境、人権などのテーマを合唱曲で扱ってきた。「哀号(アイゴー)」という言葉の響きと、随所に用いられた「アリラン」のやさしい旋律が曲を効果的に盛り上げていた。

 林光作曲「空と風と星と詩」(詩・尹東柱)は、植民地時代、日本軍部に逮捕され、九州で獄死した朝鮮の詩人、尹東柱の詩を気に入った作者が「あるがままの尹東柱を」と、作曲した。

 これら全5曲を美しい歌声で表現したのは「栗友会合唱団」。59人の女性たちの歌声に観衆たちは静かに耳を傾けていた。

 会場には台風の中、約370人が駆けつけた。

 池田逸子さん(評論家)は、「それぞれ違った傾向の作曲家たちの作品が並んだところがおもしろかった。2つの国の歴史には大変厳しいものがある。コンサートでは言葉で伝えきれないものを音楽で表現した。違いを超えて共存していくことが大切」と話した。

 また、山田昭次さん(歴史家、立教大学名誉教授)は、「朝鮮の自然と人情の豊かさ、山野の美しさが伝えられて良かった。このような地道なつながり、民衆レベルでの交流がいろんな分野に広がっていくことが望ましい。政治による表面的なつながりよりも、心でしっかりつながること、精神の深いところでつながっていくことが何よりも大事だ」と語った。(金潤順記者)

[朝鮮新報 2007.10.31]