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〈みんなの健康Q&A〉 微熱が続く!?−原因と疾患

 Q:最初は風邪かなと思ったのに、いつまでも少し熱があるのでとても気になります。

 A:発熱の原因は風邪などの感染症がほとんどですが、大した症状もないのにだらだらと微熱が続く場合は、何かほかに原因がないか調べなければなりません。

 Q:体温には日内変動があると聞きましたが。

 A:体温は午前2時から6時が最も低く、その後上昇し、昼から夕方の6時にかけて最高値に達して、また次第に下降します。その変動の幅は約1℃もあります。代謝量、活動量の多い幼児、小児ではやや高値を示します。10歳以上の健常者ではだいたい36.7〜36.9℃というのが日本人の平均値とされています。もちろん個人差があるので、ふだんの体温が37℃を超える人もまれにいます。

 Q:熱があるといっても人によってさまざまというわけですね。

 A:わきの下すなわち腋窩温で37℃台の熱がいつまでも持続する、あるいは繰り返して、体熱感が気になる場合には病的微熱を想定します。

 Q:微熱の原因にはどのようなものがありますか。

 A:一般的なものとして、ウイルスや細菌による諸種感染症から生じる感染性微熱をまず考えなければなりません。その中でも、最近また増えてきている結核、心臓内に細菌が巣を作る感染性心内膜炎、高齢者の肺炎や尿路感染症などは見逃されやすいので、医療機関できちんと診察を受けることが必要です。また、高齢者や体力の低下した人では重症の感染症なのに大した熱が出ない、つまり微熱程度のみということが多いので、これも要注意です。

 Q:感染症以外の原因にはどのようなものがありますか。

 A:もともと基礎疾患があって、その主要症状ではない随伴症状として発熱を呈する場合があります。つまり、疾患本来の症候としては発熱はふつう無いのですが、患者の状態によってはその基礎疾患そのものが高熱発生に大きく関与してくる場合です。例えば胃腸や腎臓などの癌が隠れていて、微熱をひきおこすことがあります。また、白血病や悪性リンパ腫などの悪性血液疾患、関節リウマチや炎症性動脈疾患などの膠原病ないし結合組織疾患とよばれるもの、甲状腺機能亢進症も微熱を生じうる代表的な疾患です。そのほかにも、鉄欠乏性貧血、胃・十二指腸潰瘍、肝炎・肝硬変、脱水症など多岐にわたります。

 Q:ずいぶんとたくさんの疾患が関与していますね。

 A:ただし、これらの疾患では発熱以外の本来の症状・徴候を見逃さないことが大事です。

 Q:診察や検査を受けてもはっきりした異常が見当たらない場合もあると思いますが、いかがでしょうか。

 A:諸臓器には全く変化がなく、体温上昇の器質的、病的原因を認めない発熱も少なくありません。むしろこういった場合のほうが厄介なこともあります。

 たとえば、感染後熱というのがあって、インフルエンザや肺炎などが治癒した後も、体温中枢の設定基準が正常に戻るまでの間、時には数カ月にわたって微熱が続くことがあります。慎重に見極めないと、結果的にだらだらと抗生物質や解熱剤を使用するということにもなりかねません。このような場合には、気長に構えて、あまり神経質にならなくてもよいのです。

 Q:そのほかにはどのような状況が微熱をもたらしますか。

 A:女性に特有のものとして、月経前の黄体期の月経前熱、妊娠初期3〜4カ月くらいの間に生じる微熱がありますが、このような女性ホルモンと関連した微熱もけっこう多いのですよ。若い女性でとくに症状、検査で特異的異常がなく微熱のみが続くという方を診ることがありますが、たぶん女性特有の生理的なものだろうと思われる場合がしばしばです。原則的には解熱剤は必要ありません。一方、本態性高体温症というのもあって、諸検査でまったく異常を認めず、主に自律神経機能異常によると考えられています。この中には精神的な不安やうつ病からくる心因性微熱が多く含まれます。

 Q:薬物が原因で微熱が続くということがありますか。

 A:ステロイドホルモン剤や免疫抑制剤とよばれるものを服用している人は感染症におちいりやすいのですが、急激な高熱よりも微熱という形をとることが多々あります。また、抗菌薬がかえって熱を発生させるという薬剤熱、一部の抗うつ薬による体温の上昇がよく知られています。また、痛み止めなどの抗炎症薬を常習的にちょっとしたことでも服用していると、何らかの熱性疾患にかかっても、本来あるべき高熱が覆い隠されて37℃前後の熱しか出ないということがあります。

 Q:若くて一見、元気な人にみられる微熱について教えてください。

 A:若い女性の生理的微熱が有名ですが、原因がわからないときは、20歳以下の若年者では、特別な身体的疾患ではなく心因性と考えざるを得ない微熱が少なくありません。この場合、自律神経が不安定でその上に強い情動ストレスが加わったときに生じる微熱や、うつ病などの精神科的疾患による心因性微熱がほとんどです。専門的医療が必要になることもありますが、深刻な肉体的異常ではないことを担当医師が説明し、まずは安心感を与えることが大切です。(金秀樹院長、医協東日本本部会長、あさひ病院内科、東京都足立区平野1−2−3、TEL 03・5242・5800)

[朝鮮新報 2007.10.31]