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〈本の紹介〉 北の科学技術形成史T

統一時代への基礎研究

 近年、南の研究者による北に関するさまざまな書籍が出版されている。とくに、6.15共同宣言以降に増大し、内容的にも以前のように単に北を批判するのではなく、可能なかぎり資料を集め、その分析に基づく実証的な立場によるものが多くなった。ただし、これまで北の科学技術を主題とするものはほとんどなかった。ゆえに、本書はこの分野の先駆的著作であり、ある意味画期的著作といえるものである。内容は、表紙に書かれた次の文章が如実に語っている。

 「この本は、北の科学技術活動の核心・科学院がどのように設立され、その活動はどのようなものだったのかを中心として考察しながら、北式科学技術の特徴といえる〈現場中心の科学技術政策〉が形成される過程を科学技術史的観点から明らかしたものである。また、生産現場に進出した科学者・技術者たちが生産現場の労働者たちと協力し、〈集団的技術革新運動〉を効果的に展開していた姿を具体的に描いている。これにもとづいて著者は1950年代末から60年代初に朝鮮経済の飛躍的成長が既存の主張とは異なり、労力動員体制形成による量的結果だけではなく、技術革新を通じた質的成長でもあったことを強調している」

 これまで解放以降、北の科学技術発展を取り扱った書籍には「朝鮮科学技術発展・解放後編1」(1994年)、「化学工業史1」(94)、「朝鮮建築史2」(89)、「朝鮮交通運輸史・自動車運輸編」(91)、「朝鮮交通運輸史・鉄道運輸編」(88)などがあった。いずれも平壌で出版されたものであるが、それらは、おもにその分野の成果を年代別に整理したものである。本書を画期的著作と表現したのは、本書の主題がそれらと大きく異なり、さらに、それが南の研究者によって成されたからである。

 今年10月には「北南関係の発展と平和・繁栄のための宣言」が採択され、今後、北南の科学技術交流がより盛んになることは間違いない。その先にある統一時代の科学技術を模索するためにも、それぞれの科学技術の特徴を把握することは重要な与件となる。そのために本書が果たす役割は大きく、続編への期待も高まる。

 本書は、「現代史叢書」の一冊であるが、このシリーズは「北朝鮮社会主義体制成立史」「韓国の植民地的近代省察」や「キム・ジョンイルリーダシップ研究」などの意欲作によって構成されていることを付記しておこう。

 最後に、本書の成立と関連して触れておきたいことがある。本書はソウル大博士論文「北の技術革新運動と現場中心の科学技術政策−千里馬作業班運動と北韓科学院の現地研究事業を中心として」が基となっているが、関連資料を得るために著者は二度ほど朝鮮大学校図書館を訪れたことがある。筆者が仲介役となったのだが、その際、著者と酒を酌み交わしながら、論文の構想を聞き意見を交した思い出がある。それが、このような立派な本となったのだから、筆者にとってもうれしいかぎりである。(カン・ホジェ著、図書出版ソンイン、問い合わせ=コリアブックセンター、TEL 03・3816・4344)(任正爀、朝鮮大学校教授)

[朝鮮新報 2007.11.17]