子どもの本棚 この冬、一緒に読みたい本 |
窓の外は北風がピューピュー。 寒い冬は暖かいお部屋で、ゆったりと絵本を見ながら家族団らんのひとときを過ごすのも良いものだ。 今回紹介するのは、ユニークな朝鮮の昔ばなしと、女の子が着るお正月の晴れ着のおはなし、かあさんの帰りを待つ小さな坊やの物語、そして、子どもたちが大好きなトッケビ(おばけ)のおはなしの4冊だ。 クリスマスのプレゼントやお正月のプレゼントにもよろこばれる1冊を探してみては? 問い合わせ=コリアブックセンター(TEL 03・6820・0111、FAX 03・3813・7522、Eメール=order@krbook.net)。 「このよでいちばん大きな男の子」−踊りをおどると村中大騒ぎ!
むかしむかしある村に力強い赤ん坊のうぶごえがひびきわたった。 キルサンと名づけられた男の子は、ふつうの赤ちゃんとはあまりにちがう。みるみるうちにぐんぐん大きくなって、10日で1歳くらいの子どもの大きさになり、ひと月で5歳くらいの子どもの大きさになり、1年が過ぎるころにはアボジやオモニよりも大きくなった。 10歳になったキルサンは、ずいぶん大きくなって村のうら山よりも大きくなった。体にあう服もなく、前の方だけちょっとかくしてあとははだかんぼうのままだった。 王さまから布千たんを贈ってもらい、パヂ・チョゴリを作ってもらったキルサンは、うれしさのあまりずしんずしんとおどりまわったからさあ大変…! 大きな幼い男の子キルサンと、それを取り巻く農民や子どもたち、朝鮮の農村の風景が温かくメルヘンチックな絵で表現されている。 農民たちを困らせた「罪」で、尻たたきの刑に処せられるキルサンの表情には思わず笑いが込み上げる。 巻末に、「子どもの成長とお祝いの行事」についての解説(神谷丹路)と朝鮮語の原文付き。リズムのよい文章も心に響く。 「ソルビム−お正月の晴れ着−」 チマ・チョゴリを着るよろこび
朝鮮の人々はお正月になると、頭のてっぺんからつま先まで、身につけるものを新調する風習がある。 「ソルビム」とはお正月のために新調した晴れ着のこと。 「あたらしい年、あたらしい日、あたらしい朝。みーんなあたらしく始まるさいしょの日に、なんといっても一番うれしいのは、あたらしいチマ・チョゴリを着ること!」 主人公の女の子が「ソルビム」を着るよろこびが、絵本には微笑ましく描かれている。 オンマが心をこめて縫ってくれた深紅のチマは、外がわが左に、内がわが右になるように、ぴーんと広げて体に巻きつけ、ひもを胸の前にまわしてきゅっとむすぶ。 鮮やかな色のセットンチョゴリに、白くてかわいいポソン、金箔をおしたテンギ…。 絵を追って読み進んでいくと、晴れ着の着方や服につけるいろいろな小物の名前がよくわかる。 衣装の一つひとつにすべて意味があり、子どもの成長を願う家族の思いが込められている。 巻末に「ソルビム」の解説つき。 見ているだけで楽しく、美しい絵本。 「かあさん まだかな」−いつになったら かえってくるの?
かあさんは、いつになったら帰ってくるの? 小さな坊やは冬のさなか、寒さで鼻の頭が赤くなっても、運転士さんにそっけなくあしらわれても、電車が行って帰ってきても、ただじっと、路面電車の停留所でかあさんの帰りを待っている。 セピア色の古い町並みとかあさんを待ち続ける坊やのひたむきな姿。 文を書いた李泰俊さんは、1904年江原道鉄原郡で生まれた。日本の植民地時代に多くの童話や児童文学を執筆。その後、北に移ったため、南ではタブーとして禁書扱いとされた経緯もある。 絵本の原書である《畳原原掻》は、1938年刊「朝鮮児童文学集」に掲載された。 絵本の中の世界には、朝鮮と日本とが「同居」している。日本家屋が立ち並ぶ朝鮮の町を、朝鮮服を着た登場人物たちが往来しているのである。 作者は、痛みと悲しみに満ちた時代に、どのような想いで作品を手がけたのだろう。 「韓流」に乗って、朝鮮の絵本が日本でもたくさん紹介されるようになった。時代の変化を感じさせる1冊。 「あわてんぼうのトッケビ」 朝鮮語版−「かりたお金をかえしにきたぞ!」
貧しい農夫は家に帰るとちゅうトッケビに出会う。 農夫がこの日かせいだお金はたった3文。その3文をトッケビは貸してくれと農夫に頼む。 次の日には返すという約束で、農夫はトッケビにお金をかした。 次の日の夜、約束どおりトッケビは農夫に返すお金を持ってやってきた。 「約束はちゃんと守るんだな」と安心する農夫。 しかし、トッケビは次の日も、そのまた次の日も、夜ごと農夫の家にやってきてはお金を3文置いていく。 おかげでしだいに裕福になっていった農夫は、だんだんトッケビがうとましくなってきた。そして、農夫がとった行動は、それに対するトッケビの反撃とは…。 赤い肌にまーるく見開いた大きな目、ツンツン逆立つ黒い髪、大人の背丈の2倍はある大きな体のトッケビが、長い両手をふりふり、がに股で歩く姿はどこか憎めない。 絵を描いたのは、本紙連載中の「朝鮮の風物―その原風景」の筆者、洪永佑さんだ。 絵本は同出版社が選定した「すべての同胞の子どもたちが一緒に見る昔話」シリーズ(全10冊)の第1弾。 [朝鮮新報 2007.11.22] |