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〈本の紹介〉 アジアを歩く

灰谷健次郎が見たアジアの人びと

 記者が作家の灰谷健次郎さんと一緒に平壌を訪れたのは96年の夏、ピースボートの平壌クルーズだった。

 そのとき、平壌にも「兎の眼」の読者がいることを知った灰谷さんが、「万景峰92」号の食堂の窓から夕日が沈む東海をいつまでも眺めていた姿が今も目に浮かぶ。

 昨年11月23日、灰谷さんは亡くなった。享年72歳、食道ガンだった。

 本書は、「兎の眼」「太陽の子」などで知られる作家の灰谷健次郎さんと、ベトナム戦争から生還したカメラマンとして知られる石川文洋さんの、アジアほのぼの紀行である。

 01年に実業之日本社から発行された書籍「アジアを生きる」を元に、石川さんの写真を再構成し、書き下ろしおよび、石坂啓、鎌田慧、岸本進一、櫛渕万里、小宮山量平、辻元清美、坪谷令子、前田哲男氏らの、故灰谷健次郎さんへの追悼文を加えた。

 「わたしはアジアが好きだ。旅のたいていはアジアである。アジアはどこへ行こうとしているのか。その混沌が興味深くもあり、ときには、つらい気持ちにもさせられる。アジアの民衆は、わたし自身だ。アジアの民衆が生きていく、わたしが生きていく。共に−」(灰谷健次郎)

 貧困、内戦、戦争の傷跡、働く子どもたち、人びとの笑顔、人情…。

 本書には、タイ、ベトナム、フィリピン、ミャンマー(ビルマ)、ラオス、ネパール、中国の旅が灰谷さんの文と、石川文洋さんの全315枚におよぶ写真で紹介されている。(笊カ庫、900円+税、TEL 03・3708・5181)(金潤順記者)

[朝鮮新報 2007.12.17]