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〈本の紹介〉 ここまでわかった! 日本軍「慰安婦」制度

未来への明確なメッセージ

 07年7月、米下院本会議で日本軍「慰安婦」問題に関する決議が満場一致で可決された。この決議は、日本政府に対してあいまいでない明確な公式謝罪と責任の表明などを求める画期的なものだった。

 1月31日に決議案が米下院外交委に提出されて以来、安倍首相(当時)をはじめ、一部の政治家たちは日本軍の強制や被害者の証言を否定する主張を繰り返した。安倍首相は「日本軍が強制した証拠はない」と強弁し、一部の政治家や評論家たちは連名でワシントンポスト紙に「慰安婦は公娼だ」などの意見広告を出し、日本政府は決議採択阻止のための強力なロビー活動を展開して、国際社会から激しい批判を受けた。

 また、米の有力紙であるニューヨークタイムズ紙、ワシントンポスト紙にも安倍政権を厳しく糾弾する社説が掲載されたのも記憶に新しい。

 国際社会の日本政府への強い批判は、人権感覚の欠如に対する批判であると同時に、口では「お詫びと反省の気持ち」を表しながら、それを覆すような言動を繰り返すダブルスタンダードへの批判でもあった。

 そうした「慰安婦」問題の事実をわい曲し、被害女性たちにさらなる苦痛を与える発言が続くなか、長らくこの問題の調査・研究に取り組んできた日本の戦争責任資料センターと、「慰安婦」問題の記憶の拠点として活動を進めているアクティブ・ミュージアム「女たちの戦争と平和資料館」は、「慰安婦」問題の事実関係をゆがめる言説に強く反論して、合同で記者会見を開いて、「日本軍『慰安婦』問題における謝罪は必要か」という提言を日本政府に提出し、さらに8月にはシンポジウム「ここまでわかった! 日本軍『慰安婦』制度」を共催で開くなど、真しな取り組みを続けてきた。

 そのシンポでは吉見義明中央大学教授が「日本軍『慰安婦』問題の加害責任はどこまで明らかになっているか」、林博史関東学院大学教授が「『慰安婦』制度はどのように裁かれたのか」、西野瑠美子「女たちの戦争と平和資料館」館長が、「被害者の証言は何を明らかにしているか」というテーマで報告をした。本書はその報告を収録したもので、日本軍性奴隷制度の実態を明らかにしたもの。

 日本国内の右派から執拗な攻撃が続くなか、「慰安婦」問題の解明に向けて誠実に取り組んできた各氏の研究は、未来のための明確なメッセージとなるであろう。(日本の戦争責任資料センター「女たちの戦争と平和資料館」編、かもがわ出版、1000円+税、TEL 075・432・2868)(粉)

[朝鮮新報 2007.12.22]