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釜山アイパーク 安英学選手 昨シーズンをふり返る

「夢」は継続、欧州リーグとW杯

 Jリーグの名古屋グランパスエイトから昨年1月、Kリーグの釜山アイパークに移籍した在日同胞プロサッカー選手のMF安英学選手(28)が1年目のシーズンを終えた。ボランチとしてチームに貢献。Kリーグオールスター戦にも選出され、有名デザイナーのアンドレ・キムのファッションショーに出演するなど実り多きシーズンとなった。朝鮮籍の在日同胞、元朝鮮代表選手の看板を背負って南朝鮮でプレーをしメディアから注目を集めたが、プレーで周囲を認めさせ実力でスタメンを勝ち取った。今シーズンも釜山アイパークと1年契約を結んだ。昨年末、日本に一時戻った安選手に釜山でのシーズンを振り返ってもらった。(聞き手=金明c記者)

Kリーグ屈指のボランチに成長 在日の「安」から朝鮮民族の「安」へ

−移籍1年目から強じんなフィジカルを全面に押し出して29試合に出場、3ゴール2アシストを記録した。

今年はもっと得点して結果を残したいと語る安選手

 安 Kリーグのサッカーは予想通り当たりが激しくて、勝負に対する執着心は本当に鬼気迫るものがある。Jリーグも激しいところはあるし、気持ちの面ではあまり変わりはないけど、全体的な激しさではKリーグの方が上回っているかな。これは「民族性」なのかなって思う(笑)。

 全てには満足していないが、常にグラウンドに立ててある程度の手応えは感じた。

 第一に試合に出ることを目標にしていたし、しっかり実力を証明してサポーターたちの心をつかもうと心がけた。Jリーグのアルビレックス新潟にいた時と同じで、実力がないと誰も応援してくれないのは、Kリーグでも同じだから。

−3月12日、ホーム釜山での開幕スタメン出場で、監督から合格点が与えられてのスタート。その後、ケガで約1カ月、戦線を離脱したが、金南一、宋鐘国など代表クラスの選手を抱える水原戦(4月23日)で見事に復帰。得点に絡む活躍で勝利し好調をアピールした。

 安 実際にシーズンが始まって「やってやるか!」って時にケガした。「早く復帰したい」というもどかしい時間だったけど、チームスタッフらが温かくサポートしてくれて、復帰後もスッとチームの中に入っていけた。

 釜山アイパークはみんな家族みたいで仲がいい。先輩を「ヒョン(兄)」って気軽に呼ぶし、後輩は「ヨンハクヒョン(英学兄)」って慕ってくれる。最初にチームに合流した時のキプロスでの合宿のとき(昨年1月下旬)は、慣れない僕にみんなが声をかけてくれてすぐに溶け込めた。

−水原の金南一選手との対決で「北産、真空掃除機『安英学』元祖(金南一)負かす(북한산 진공청소기 안영학 원조 꺾었다)」とスポーツ紙に見出しがついた。インターネットファン投票で11位になってオールスター戦にも出場。ファッションショーにも出演し、Kリーガートップ選手の仲間入りを果たした。

  安 南のメディアはなんでも大げさに書きたがるみたいで(笑)。代表クラスの選手はみんなうまくて学ぶことがとても多い。オールスター戦はまさか自分が選ばれるなんて考えもしなかった。注目されるのは光栄なことだと思っているし、今後もその期待に応えていきたい。

 ファッションショー出演は、最初はアンドレ・キムさんが冗談で言っていると思っていたけど、シーズンが終わってまた声をかけられて本気なんだと知った。自分の全く知らない世界でどんなものなのか見てみたかった。

−Kリーグ屈指のボランチとして成長、実力も高く評価されている。

 安 監督からは相手を自由にさせないプレー、バランスを取ることを要求されている。あとはパスの質を高めることとゴールを狙うこと。年も年長の方だから、今シーズンはリーダーシップを発揮していきたい。

 今後の目標は昨シーズンよりも多くゴールして結果を残したい。余談だけど、Kリーグでプレーしてわかったことが一つあって、ゴールに対する評価がすべてだということ。サッカーにおいてはゴールした選手がすべてじゃなくて、それまでの過程が重要だけど、南では日本以上にゴールが重要なんだと感じた。

−入団当初からたくさんのサポーターがいて、ネット上のファンサイトも数多い。

 安 釜山はソウルと比べるとまだまだ田舎。でも人々は温かく言葉も気持ちも優しくて、とくに練習後に入る風呂とサウナの気持ちよさは最高。試合となると、数千人しか応援が入らないから最初は寂しかった。それでも何人であろうが応援してくれる人たちのために一生懸命プレーしなきゃいけないって思った。釜山のサポーターは太鼓をたたきながら大声で歌ったりして熱狂的。06年は8位で終わったけど、今年こそは応援してくれる人たちのためにも優勝したい。

−子供たちと過ごして癒しの空間を作るスタンスは南朝鮮でも変わらない?

 安 ソウルや釜山の小学校でサッカー教室を開いた。親と一緒に住んでいない子どもたちがいる「福祉院」っていうのが南にあって、そこの子どもたちともサッカーをした。日本でも朝鮮学校の子どもたちとよくサッカーをしたけど、子供と触れ合うと新鮮な気持ちを取り戻せるし癒される。そこでの経験を自分の力に変えられるからいいですね。

−「夢」はまだまだ継続中だ。

 安 Kリーグからヨーロッパのクラブでプレーしたい気持ちはずっと変わらない。朝鮮代表にも呼ばれて同胞と日本人サポーターたちが熱狂する舞台にもう一度立ちたい。W杯アジア最終予選の熱狂は忘れられない。代表に呼ばれるようにもっとレベルアップしていこうと思う。1人じゃ難しいこともみんなの応援があればがんばれるし、乗り越えていける。これからも在日同胞と日本人、北南朝鮮の応援してくれる人たちの期待に応えていきたい。

 在日同胞の「安英学」から朝鮮民族の「安英学」へ。人として、サッカー選手として、一回り大きく成長した姿があった。「夢」に向かってさらなる挑戦は続く。

[朝鮮新報 2007.1.22]