全国大会出場、伸びる記録に快感

�｢良哲さん

　記者の前に現れた黒縁メガネにカジュアルな服装、スマートな今どきの青年。「人違いかな？」と思いきや、彼はまさしく�｢良哲さん（24、中央大学）だった。「あれからだいぶやせました」。今は推薦入学で入った中央大のウエイトリフティング部を退部して普通の学生生活を送る。

　北海道朝高のウエイトリフティング部でインターハイを制覇した朴徳貴さんと同級生。高３時、インターハイの９４キロ級で堂々の３位となり、部の一時代を築いた。気合いを入れて競技に臨んだ坊主頭がトレードマークとなり注目を浴びた。

　しかし、「王者・朴徳貴」の印象があまりに強く、その側で黙々とベンチプレスを持ち上げる「�｢良哲」の姿を思い浮かべる人は多くないだろう。

　高２の朴徳貴さんが朝高初のインターハイ王者に輝いた時、�｢さんは８５キロ級で２０位だった。

　一気に高校ウエイトリフティング界の頂点に立ち、同胞らの希望の星となった朴さんを報道陣が一気に囲んだ。

　その一部始終を�｢さんは遠くから眺めていた。厳しい練習をこなして全国大会の舞台に立った、唯一の仲間の快挙だったが、素直に喜べない自分がいた。

２０００年のインターハイで３位入賞した時の�｢さん。気合いを入れて丸めた頭が周囲の目を引いていた

　「うれしいというよりも、正直悔しい思いの方が強かった。あの時の光景はしっかりとまぶたに焼きついている。いろんな意味で忘れられない」。顔では笑えても心では笑えなかった。最大のライバルが目の前にいた事に気付かされた。

　「今だから言えるけど、あの時の新聞なんか徳貴だらけで見れたもんじゃなかった（笑）」

　初級部はサッカー、中級部は空手部。空手部とウエイトリフティング部は部室を半々で使っていたため、ウエイトリフティング部の練習は見ていた。

　ある日、「うちに入ればもっと空手が強くなる」とウエイトリフティング部の金尋監督と朴徳貴に誘われた。

　（週に３回ずつならやってみるか…）。しかし、バーベルを上げたら最後、毎回「ごちそう攻め」に遭い、帰りは必ず車で家に送ってくれた。部が仕込んだ包囲網（？！）をかいくぐれず、とうとうウエイトリフティング部に入部した。中２の３学期のことだ。

　「あれだけやさしくされるとどうしても断れなくて…」

　やさしさから一転、厳しい練習へと変わっていった。練習は好きではなかったというが、「記録が伸びるたびに快感を覚えた」。

　�｢さんがそのまま空手部だったら全国大会に行けただろうか。「そのままだったら何も残せず朝高生活を終えていたと思う。ウエイトリフティング部には、目標を設定してそれに向かう姿勢、努力すれば全国大会に出場できるという希望があった」。

　同級生の朴徳貴とともにウエイトリフティングに打ち込む日々。授業が終わっては基礎体力強化のためのトレーニングに打ち込み、夜１０時の帰宅は当たり前だった。食事の量を増やしてしっかり体重を増やした。

　朴徳貴がインターハイ王者になった日から、悔しさをバネにして「必ず、いつか追いつく」と厳しい練習にも耐えた。そして「インターハイ制覇」を心に誓った。優勝には及ばなかったが、全国３位の成績は堂々たるものだった。

　「メダルを見て実感がわいた。みんなが駆け寄ってきてむちゃくちゃほめてくれた」。最後まで朴徳貴には及ばなかった。でもそれがすべてではない。自分自身との勝負に勝ち、ベストを尽くした結果が「銅メダル」だった。「十分練習してきたから満足できた結果。悔いはない」。晴れ晴れした表情がすべてを物語っていた。

　指導してきた北海道朝高ウエイトリフティング部の金太壌コーチはいう。「あいつは本当にどうしようもないやつ。部のギャグ的な存在でうちには欠かせないキャラ（笑）」と冗談を交えつつ、「徳貴の背中を見て、悔しさをバネに変えた反骨精神が良哲を育てた。学校生活でも部活でも一番成長したのが良哲かもしれない」。

　朝高生活のすべてをウエイトリフティングに費やした�｢さん。青春時代の「金メダル」は今でもずっと心の中にある。（金明�c記者＝つづく）

［朝鮮新報 2007.2.7］