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神戸朝高女子を熱血指導 姫路獨協大バレー部監督 上山恭三さん

バレーボール通じた人間教育実践

 「バレーボールを通じて国境や民族を超えて、心と心が触れ合えるような人間作りをしていきたい」−姫路獨協大学バレーボール部の監督を務める上山恭三さん(62)は、自身を「バレーボールの伝道師」と表現する。「一人でも多くの先生、生徒たちにバレーボールの楽しさ、すばらしさを伝えていきたい」との熱意は現在、神戸朝鮮高級学校女子バレーボール部に注がれている。2002年から週に3〜5回、同部を指導している。近年、同校バレーボール部が神戸市でベスト8以上、「春の高校バレー」県最終予選に4年連続で出場した実力の背景には陰の功労者がいた。

一つでも勝利を

試合後。、上山さんのアドバイスに聞き入る選手たち

 バレーボール指導歴39年。過去、日本の中学校、高校バレーボール部を全国大会へと導いている名将で、日本バレーボール界で知らない人はいないという。現在、「柳本ジャパン」こと全日本女子の柳本昌一監督とも旧知の仲で、今でも連絡を取り合っているからその実績がどれほどのものか知ることができる。そんな人物が神戸朝高女子バレー部と縁を持った。

 普段は優しい面持ちの表情がコートの中に入ると一変する。「どんどんいかんかい!」「なんでそこで飛ばんのや!」「そんなブサイクな打ち方するな!」。

 大きな掛け声が体育館に響く。それでも選手たちはレシーブにアタックとしきりにボールに食らいつく。

 「よっしゃ。今のはええぞ!」。時には褒めることも忘れない。選手たちも上山さんを見る眼差しは真剣で、言葉の一つひとつをかみ締めて何度もうなずく。ピリピリした雰囲気の中でもチーム内の一体感が垣間見られた。

 「記者さん、選手たちみんなが駆け足なのがわかります? コートの中では歩いてはいかんのです」とほほ笑んだ。そして続けた。

 「目的に到達できたらよくやったと声をかけて必ず褒めてあげる。みんな素直でいい子たちばかり。朝鮮学校は人数が少ない中でもがんばっている。だからこそ一つでも多く勝たせてやりたい」

国は違っても

上山恭三さん

 00年、上山さんがまだ灘中学校校長をしていた時代。西播朝鮮初中級学校バレーボール部との練習試合を見学した。西播初中は灘中と98年から交流を持ち、練習試合をたくさんこなしていた。

 当時の神戸朝高のバレー部監督が練習で選手たちにきついボールを当てていたのを見て、「一生懸命やっているのはわかるけど、それを見ていかんと思い、もっとこうしたらどうかとかいろいろアドバイスした」。これが朝鮮学校バレーボール部と関わるきっかけとなった。

 その後、西播初中で行われるさまざまな行事に選手と共に招かれたりして親交を深めていった。

 当時、西播初中の監督が神戸朝高女子の監督に就任し、「指導をお願いしたい」と上山さんに声をかけた。そして02年から神戸朝高女子バレー部を指導するようになった。

 それでもなぜ同部で指導することを二つ返事で了承したのだろう。その思いは「ただ朝高を強くしたい」という単純なものではなかった。

 日本学校の教員をしていた30代前半の頃に、在日コリアンと仲良くなったことが、今の上山さんに影響を及ぼした。

神戸朝高女子バレー部父母会のメンバーに囲まれて

 「知らない間に持っていた朝鮮半島の人々たちに対するよくないイメージが、その人との出会いによって薄らいで、物の考え方がガラリと変わった」。朝鮮民族の家庭環境や生活、物の見方や考え方、朝鮮民族の宝とも言える民謡「アリラン」の意味や由来がどういう意味なのかなどいろいろな話をしたという。

 「もっと交流していかないとダメだと思った。その恩返しを神戸朝高でしたいと思った」

 日本の教育現場に長年携わってきた上山さんにはモットーがある。それは「バレーボールを通じて人間を育てること」。

 神戸朝高でそれを実践しているが、日本学校での指導とは一つ違うことがある。それは「朝鮮人としての誇り、アイデンティティーを持てるよう手助けすること」だ。

 「民族教育を受けてきた子たちが朝鮮人として生きるのはごく自然で当たり前のこと。チマ・チョゴリを堂々と着て歩ける社会になってほしいよね。日本で生きる中でいろんな壁を乗り越える強さを持ってほしい。こんな物好きな日本のおじさんもいるということを選手たちに知ってもらうだけでも、いい教育になると感じている」

心臓患っても「バレー」

神戸朝高バレーボール部と共に(後列右端が上山さん、左端が金炳潤監督)

 「実は身体障害者なんです」と障害者手帳を取り出した。5回も心臓麻痺を起こし、今は体の中にペースメーカーが入っている。

 「大好きなお酒かバレーボールを取るか、迷って結局バレーを取った」。医師に最初に聞いたことは「バレーは続けられますか」だった。

 心臓を患っていることを監督、学父母も選手たちも知っている。「僕の生きざまを知ってもらうことで、命の大切さを知り、そこで優しさも生まれてくる」。

 まさしく「バレーボールを愛する教育者」。そこまでして神戸朝高女子バレー部に一生懸命になってくれている先生に報いたいと選手たちは思っている。

 主将でエースの李美淑選手(2年)も感謝の気持ちでいっぱいだ。「チーム内が活気づいて技術面でもすごく伸びている。一つひとつのプレーに厳しく接してくれるし、試合にどんな気持ちで挑むのかも学んでいる。しんどい時もあるけど、得るものが多い」。

 学父母からの支持も絶大だ。女子部の父母会は昨年1月に結成された。

 李泰子さん(49)は、「2人の娘が上大山さんのお世話になった。ウリハッキョバレー部に対する愛情、子どもたちに対する熱意が伝わってくる。ウリハッキョの子を強くしようとするその気持ちが本当に励みになる」と語る。

 上山さんは最後にこう言った。「よく『コートの中で倒れたら本望だ』なんていうじゃないですか、あれは嘘。やっぱりいつ倒れるか怖い。それでもやり続けることが大事だし、バレーボールは人生そのもの。一生続けていきたい」(金明c記者)

[朝鮮新報 2007.2.28]