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〈北海道朝高ウエイトリフティング部物語G〉 学校の理解、父母の支えと絆

「ウエイトリフティング、やらせてよかった」

娘の金恵娟さんを支えてきたアボジの金甲烈さん(右)とオモニの芮富子さん

 北海道初中高ウエイトリフティング部は現在、放課後の練習は、下校時間を過ぎても続けていいが、当初はほかのクラブと同様、決まった時間に下校しなければいけなかった。勉学とクラブ活動の両立が基本。クラブ活動が「主」であってはならなかった。

 しかし「全国」を目指すとなると話が違ってくる。練習をやればやるほど伸びるのがウエイトリフティング。頂点を目指すには、学校のあらゆる行事に拘束されない時間が必要だった。

 そうなるとさまざまな学校行事に参加できなくなる。ウエイトリフティング部だけ特別扱いするわけにもいかない。それでも同部の金尋監督や姜信鎬、金太壌コーチらの熱心な指導に当時の崔寅泰校長は全幅の信頼を寄せた。練習に集中できる環境を学校全体で整えていった。

 「結果が出てなんぼの世界だった」と語るのは同部の金有燮部長(34、同校教務部長)。朴徳貴選手がインターハイで金メダルを取ると周囲の目も大きく変わった。

全国大会に参加するたび会場には地元の同胞たちが必ず応援に駆けつけた。前列中央が高3当時の金恵娟さん

 「運動会も抜けたり、高3の修学旅行の祖国訪問も行けなかったりする。それでも指導者も生徒もウエイトリフティングに賭けていた。同級生たちと同じ空間におれず、辛い思いをしているのは部員たち。それでも周りの同級生の理解が部を大きく成長させた」

 金部長も当時は空手部を指導。空手部がなくなった今はウエイトリフティング部の部長を受け持つようになった。

 当初、高校生たちがここまでやるのかというぐらいに、練習を見て驚いたという。

 「そこらのクラブとは追求意識が違う。だから全国大会に出て当たり前。そういうプレッシャーの中でいつも戦っているから、どんな困難にぶつかっても乗り越えようとする力がここで育つ。なんといっても人間が大きく成長する」

 学校の理解だけでは部の発展はない。選手の父母たちの支えも大きい。

 全国大会4連覇を果たした唯一の女子部員だった金恵娟選手(20、明治大学2回生、同大ウエイトリフティング部)のアボジである金甲烈さん(50、北海道初中高・舎監主任)とオモニの芮富子さん(48、北海道初中高職員)は、「恵娟が高級部の間は楽しみばかりだった」と口をそろえる。金恵娟選手は3人兄弟の長女。下には北海道初中高に通う高3の息子と中1の次女がいる。

 中1からウエイトリフティングを始めた娘を支えた夫婦の楽しい思い出、エピソードは数知れない。

 当初、2人とも娘がウエイトリフティングを始めるのには大反対した。確かに親の気持ちとしてはそうかもしれない。「舞踊部をやめて中1から始めるって本人が言い出した」。舞踊も陸上も吹奏楽も合わないといい、「自分が決めた道なら」と渋々承諾した。

 「本人は一番楽そうだって思っていたみたい…。でも実際には一番しんどいクラブ。金太壌コーチが『ウエイトやったらスマートになる』なんて言うもんだから(笑)」とオモニのさん。

 「やるならとことん最後まで」。それが両親の思いだった。それでもどこか心の奥底でウエイトリフティングをやめてほしい気持ちがあった。そこでアボジの金さんは入部1カ月が経った頃、練習を見に行った。一生懸命練習する娘の姿を見て納得した。「これからしっかり支えてやらないとだめだ」。

 こんなエピソードもある。高1で出場した女子選手権で3位になって、家に帰ってきて「『こんなのいらない!』って銅メダルを投げた。高1で3位ってすごいことって言ってもきかなかった。相当悔しかったんでしょう。それから全国で敵なしになった」。

 練習を終えて夜の9〜10時に帰ってくるのは当たり前。遅く帰ってきても健康に気づかい、食事はしっかり用意した。食卓には毎日さまざまな料理が並んだ。「メニューを考えるにも一苦労。食事代はいくらかかったかわからない。それくらいよく食べた」と2人は笑う。

 「恵娟が上京した今は、食卓におかずが並ばなくなった」と冗談を飛ばすアボジの金さん。間髪入れず「そんな事ないわよ!」とつっこむオモニ。娘を支えてきた夫婦の仲むつまじい姿が垣間見える。

 一方で、全国各地で行われる大会で毎回応援してくれる同胞に温かく迎えられて恵娟さんが成長したと語る。「茨城ではトンポの家に泊まったこともあったし、横断幕を作ってくれたこともあった。一人じゃないってことを感じていたと思う」。

 家族二人三脚で打ち込んだウエイトリフティング。今では「やらせてよかった」と心の底から自負する。

 「恵娟は私たちの『英雄』。どこにいても芯の強い朝鮮人として育ってほしい」。ウエイトリフティングで結ばれた親子の固い絆がここにある。(金明c記者=つづく)

[朝鮮新報 2007.3.7]